これを押さえれば名義預金にならない!見分け方と対処法を徹底解説!

名義預金

名義預金の恐ろしさをご存知でしょうか?

名義預金とは、配偶者や子供、孫名義の預金であっても”亡くなった方の財産”であると税務署に指摘されてしまう預金のことです。
相続税の申告や相続税対策をする上で、名義預金をきちんと理解することは非常に重要です。

『自分の名義だから今回の相続には関係ない!』『……と言えば大丈夫』と軽く考えるのは禁物です。税務署は名義預金を立証するために預金作成時の状況や入金出金の履歴等を詳細に調べてくるからです。

相続税の税務調査で申告漏れが指摘される割合は実に81.8%にも及びます。その中でも預金の申告漏れが一番多いのです。

国税庁:平成27事務年度における相続税の調査の状況について

名義預金であると認定されてしまえば、延滞税や加算税等の本来払わなくてよかったペナルティまで取られてしまいます。

加算税等のペナルティ含む調査1件あたりの追徴税額は、498万円にも及んでいます。

 

また、10年、20年と毎年計画的に預金の名義を変更し続けたとしても、それらが名義預金であると認定されてしまえば、全ての預金が相続財産として相続税の対象となってしまいます。

20年かけて行った『相続税対策』もすべて無駄になってしまうのです。

知らないというのは非常に恐ろしいですね。

そこで今回は、税務署に立証されやすい名義預金について実際の事例をもとに丁寧にご説明します。名義預金について正しい知識を身に付けることができれば、今目の前にある疑わしい預金が名義預金なのかそうでないかは判断がつくことと思います。

そして、今目の前に相続財産となる名義預金がある場合、どのように対処するべきかを事例を用いて解説いたします。

さらに、次の相続の際には名義預金と指摘されないために、名義預金と疑われないための方法とすでに名義預金と指摘されそうな財産がある場合の適切な処理方法をご説明します。

名義預金をきちんと理解し、余計な税金を取られないようにしっかりと対策してくださいね。

 

1. 税務署に指摘される名義預金の特徴

お亡くなりになった方(被相続人)の財産を相続で取得した場合には、財産を取得した方に相続税が課税されます。

ここで重要となってくるのが財産の帰属です。
ある財産が被相続人の残してくれた財産なのか、相続人固有のものであるのか?

簡単なようですが、実務上非常に悩ましい問題なのです。

 

相続財産?固有財産?

預金の場合、名義人が財産の所有者であると推認されます。Aさん名義の普通預金の場合、特段の反証がない限りはAさんの財産とされるのです。

ここで重要なことは、名義はあくまで参考程度であり、実際にはBさんの財産であると立証されてしまえばそれはBさんの財産と扱われてしまうということなのです。

実務上、被相続人以外の者の名義の財産の帰属の判断に当たっては、単に名義人が誰であるかという形式のみにより判断するのではなく、その財産の取得原資管理及び運用の状況並びに帰属の変動の原因となる事実の有無等の客観的事実を総合的に勘案して判断するべきであるとされています。

 

実際の事例から、税務署に立証されやすい名義預金の特徴をまとめましたのでご確認ください。

 

立証されやすい名義預金

 

1-1. 亡くなった方が作った本人以外の名義の預金

自分が作った覚えがなく亡くなった親が作ってくれた通帳がある場合、それは名義預金と指摘される可能性が高いです。

『だれが作った通帳かなんてわからないではないか??』

そうとも言えないのです。

 

預金作成者が財産の所有者

 

なぜならば、預金作成時の書類の筆跡や登録されている印鑑を確認されれば、自分が作った預金であるか親が作った預金であるかは簡単に判断されてしまうからです。

課税実務上、名義人本人ではなく亡くなった方が作成した預金であることが立証されてしまうと、名義預金であることが立証されたのとほぼ同然です。名義を変えたから贈与と扱われるのではないのです。亡くなった方が自分の財産を『子供名義で貯めていた』とされ、相続税の対象とされてしまうのです。

また、『10年以上前に親が作った定期預金だから時効ではないのか?』と思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、名義預金は贈与と扱われる訳ではありませんので、時効という概念もありません。

お父さんが10年以上前に作った定期預金であっても、亡くなった時点で存在すればそれは相続財産になります。それがお父さん名義の預金であっても子供名義の預金であっても同様です。

 

1-2. 亡くなった方が管理支配していた預金

通帳やキャッシュカード、印鑑は誰が管理しているでしょうか。通常は財産の所有者が財産を管理することになります。名義が自分のものであっても親がそのお金を自由に管理支配していたのであれば、それは親の相続財産であると判断されてしまいます。

『亡くなった後に管理支配の状況なんてわかるわけないじゃないか??』

そんなことないのです!

 

管理支配が重要

子供名義の定期預金の書換えにあたり、父親が自己の預金で利用している印鑑と同様の印鑑で書換えをした結果、管理支配は父親であると認定された事例があります。

また結婚をして松本市に住んでいるにもかかわらず、実家と取引のある東京の金融機関で新たに設定された定期積金について、『格別の事情のない限り、考え難い』と名義預金が立証された事例もございます。

その気になれば金融機関の担当者への聞込みなども行われます。『毎月お父さんからお金を集金して子供名義の定期積立をしていた』という金融機関担当者からの情報があれば管理支配が父親であったと立証されたも同然です。

苦し紛れに『毎月子供から集金したものを渡していただけだ』と主張してもなんら証拠もありませんし、実際の資金が父親の他の口座から出ていたことが1度でも証明されてしまえばその主張は崩れてしまいます。

父親のお金が原資となっていますし、贈与した事実もないので名義預金であるとされてしまうでしょう。

子供が結婚して実家から遠くに住んでいる場合は特に注意です。離れて暮らしていますので、実家の取引銀行での預金の管理支配は親であると指摘されやすいのです。

 

1-3. 預金の原資が亡くなった方のものである

財産の原資は非常に重要です。つまり誰が稼いできたお金かということが財産の所有者を判断するうえで非常に重要なのです。夫婦名義の財産の場合は特に原資が重視されます。

夫が渡した生活費を妻が上手にやりくりしてその余りを妻の名義で貯金していたとしても、それは夫の財産と判断され名義預金として扱われます。

『夫から贈与され、私が自由に管理支配をしていたのだから私のものでは??』

 

へそくり

残念ながら夫婦間の生活費は特別なのです。

一緒に生活をしている夫婦ですから、便宜上財産の名義を変えることもあるでしょうし、家計や預金の管理はすべて妻に任せているようなご家庭もあることでしょう。妻に名義を変えていた預金であっても夫が失業して生活費に困ればそこから生活費に充当することは当然に行われるはずです。

このような夫婦特有の事情を考慮して、夫婦間の生活費については、その資金の管理運用状況をもって、財産権の移転を意図した贈与契約があったものとは扱われないのです。

つまり贈与契約書で贈与の事実を立証しない限り、専業主婦のへそくりは税務署には認められないのです。

 

2. 今ある疑わしい預金の対処方法

2-1. 名義預金ではないものはそのままにしておく

『1.税務署に指摘される名義預金の特徴』で簡単に立証される名義預金の特徴を3つご説明しました。

  1. 亡くなった方が作った他人名義の預金
  2. 亡くなった方が管理支配していた預金
  3. 預金の原資が亡くなった方のものである

これら全てに該当して贈与契約書もない場合には、残念ながら名義預金と指摘される可能性が非常に高いですので、今回の名義預金については相続財産として適切に処理することをお勧めします。『2-2. 相続時にある名義預金は遺産分割の対象』に進んでください。

これらのうち一部に該当している場合であっても、名義預金でないと主張することが可能な場合もあります。

例えば、祖父が作成して祖父の原資である明らかな孫名義の預金であったが、ある時に適切に祖父から孫に贈与されたようなケースです。贈与契約書を作成していること、贈与税の申告が必要な金額(平成12年までは年間60万円、平成13年からは年間 110万円)であれば贈与税の申告納付がされていることが大前提です。

 

適切に贈与した名義預金

 

注意していただきたいのは、預金として預け入れた年ごとに贈与税の申告有無を判断するのではなく、正式に贈与があった時点の金額が贈与税の対象となるということです。

図のケースの場合、月額5,000円の積立ですので1年間の積立額は6万円になりますがその金額で判断するのではなく、贈与があった時点の残高108万円で判断をするのです。

他にも様々なケースがあると思いますので、ご心配な方は相続税の申告を依頼した税理士にご相談することをお勧めします。

名義預金でないものであれば、相続財産ではありません。名義人の財産ですので、これまで通りにしておくことをお勧めします。

普段からご本人が出し入れしていた通帳であればそのまま普通に出し入れすれば結構ですし、定期預金としてずっと寝かしておいたのであればそのままにしておけばいいのです。

親が亡くなった直後に預金を解約したり、これまでずっと定期預金にしていたのに急に投資信託を買ってみたり等の変化があると『相続前は子供が管理支配していなかったのではないか?』とあらぬ疑いを持たれることになります。

ですので、名義預金でないのであればそのままにしておくべきなのです。

 

2-2. 名義預金は遺産分割を行い相続税の申告をしよう

財産の原資や管理支配の状況、適切な贈与の有無などを判断して名義預金であると認めざるを得ない財産については、亡くなった方の相続財産となります。

名義預金については、名義人が相続したとみなすようなルールはありませんので、遺言がない場合には原則通り遺産分割の対象となります。

他の相続財産と同様に遺産分割協議を行い、相続税の申告が必要な場合は申告するようにしましょう。

『孫名義の預金だから孫に渡したい』というご要望もあるでしょう。

しかし遺言がない限り、相続人でないお孫さんが相続財産を取得することはできないのです。このような場合は一度相続人の誰かに相続させておいてその後に贈与でお孫さんに渡すことになります。

 

遺産分割の対象

 

亡くなった方の配偶者が健在であれば、配偶者の税額軽減を使うことができますので、相続税負担も考慮して財産の取得者を決めるようにしてください。一度配偶者が低い税負担で相続しておき、その後生前贈与や死亡保険金等を使って二次相続に備えるのがお勧めです。

配偶者がいる場合であっても重い病気でその後の対策等が困難な場合には、初めから名義人である相続人に相続するといいでしょう。一次相続よりも配偶者がいない二次相続の方が相続税が高くなる傾向があるからです。

 

<名義預金を申告しないで戦いますか?>

 

税務調査やその後の裁判で名義預金が相続財産であるとされてしまった事例は非常に多いのですが、税務署側が名義預金であることを立証しきれずに裁判で納税者が勝訴した事例も少なからず存在します。

 

しかし、よく考えていただきたいのです。相続が発生してから相続税の申告を行い、税務調査で名義預金を否認されて、裁判で勝訴するまでには非常に多くの時間と労力がかかります。

 

相続発生から裁判まで

贈与があったことをきちんと立証できるのであればそれは『名義預金』とは言えませんので申告する必要がありませんが、名義人も存在を知らなかったような預金は典型的な名義預金ですのでなかなか贈与の事実を立証することは困難です。明らかな名義預金はきちんと相続財産として申告することをお勧めします。

 

また今後の相続のためには、生前贈与等の相続税対策を適切に行なっておき、名義預金であるという疑いを持たれないようにしておきましょう。結局のところ適切に相続税対策することが一番簡単で、結果的に支払う税金が少なくすむことが多いのです。

 

3. 名義預金と指摘させない重要ポイント5つ

今ある名義預金を適切に相続したら、次の相続税対策を適切に行うようにしましょう。

冒頭でご説明したとおり、相続税の税務調査が来た場合、81.8%の確率で当初申告した内容が否認されてしまうのです。

できる限り名義預金と疑われないようにすることが、相続税の調査の対象とならないためにも重要です。

そこで名義預金と疑われないためのポイントをまとめました。一つずつご説明していきます。

 

名義預金とされない5つのポイント

 

3-1 誰の財産かを意識し、安易に名義変更しない

1つ目のポイントは、財産の名義を安易に変更しないことです。

個人が稼いだ財産はその収入を得た個人の財産です。それを妻や子供名義の預金に変えたり、さらにそれらの名義から自分の名義に戻したり等を繰り返していると、それらの預金は名義預金であると考えられてしまいます。

財産の名義を変更するということは、なんらかの法律行為が発生しているはずなのです。

 

法律行為が必要

なんらこれらの行為がないのであれば、財産の名義が変わることは不自然です。安易に名義変更することで名義預金であると疑われるリスクが高くなってしまうのです。

『相続税を少なくしたい』という気持ちは当然わからなくもないのですが、闇雲に財産の名義を変えることによって、明らかに不自然な状況が作り出されてしまうのです。

専業主婦で収入がないはずなのに預金残高5,000万円??

未成年なのに預金残高2,000万円??

これらが即アウトであると言っているわけではありません。贈与等適切な法律行為によってそのような状態になっているのであればその旨を説明すればいいのですが、あとから指摘されて”贈与を受けていたのだ”となんの証拠もなしに主張しても、『贈与があったことを認めるに足りる証拠はない』とされてしまうのです。

 

3-2 贈与契約書を作成して贈与の事実を残す

2つ目のポイントは、贈与契約書の作成です。これが一番重要です!

わざわざ親族間で預金の名義を変更するのに贈与契約書を作成されている方は少ないでしょう。

しかし2つの事例で確認したとおり、『贈与があった』と後から口頭で説明をするだけでは贈与はほとんど認められないのです。

特に同じ生活費で共同生活を送る夫婦だからこそ、贈与をしたのであれば贈与契約書が必要なのです。

後に贈与があったことを示すためにもきちんと贈与契約書を作成するようにしましょう。

贈与は『あげます』『もらいます』という意思の一致で成立する法律行為です。

 

贈与契約

贈与の成立に必ずしも贈与契約書は必要な要件ではありませんが、実際に名義預金と否認されている事例のほとんどが贈与契約書を作成していないケースなのです。

贈与契約書を作成するのは面倒かもしれませんが、贈与の事実をあとから争うよりは断然簡単で時間もかかりませんので、贈与をしたのであれば贈与契約書は必ず作るようにしてください。

贈与をする意思と贈与を受ける意思、贈与する財産の内容、贈与する日付、お互いの署名押印があれば大丈夫です。

 

贈与契約書見本

贈与契約書は必ず作るようにしましょう。作ったり作らなかったりするのはお勧めできません。

実際の裁判事例でも、過去に贈与契約書を作成していたにもかかわらず今回は作成していないのだから贈与はなかったとされてしまった事例はあります。贈与契約書を作成する認識があるにもかかわらず今回作っていないのであれば、同じ贈与として整合性がないと判断されてしまうのです。

贈与契約書はあとから贈与の事実を争う場合に非常に有効ですが、このように作ったり作らなかったりですと逆効果となりかねませんので、きちんと贈与の都度作るようにしましょう。

 

3-3 子供への贈与は普段使いの本人口座へ

3つ目のポイントは、贈与を受ける子供が普段使っている金融機関の口座へ贈与をすることです。

特に、結婚をして離れて暮らしているような子供に贈与をする場合には、本人の普段使いの口座への振込を意識してください。

贈与専門の通帳をつくることは厳禁です。自由な処分があることを説明できないだけではなく、本当に贈与したにもかかわらず名義預金であると判断されてしまうリスクが高まってしまうのです。

 

贈与専用通帳は疑われやすい

先ほど事例をご紹介したとおり、松本市に住んでいる主婦が実家がある東京の金融機関で定期積金を始めるということは『名義預金です』と言っているようなものなのです。

また、株式や投資信託等の有価証券の贈与はお勧めです。配当等の受取りや資産運用の状況から贈与された側の管理支配を説明しやすいからです。
また、有価証券の贈与では手続きが煩雑ですがその分安心なのです。贈与する側の証券口座から贈与を受ける側の証券口座へ財産を移管する手続きが必要となりますが、通常は証券会社に贈与契約書等の書類を提出する必要があるからです。嫌でも贈与契約書を作成することになります。

 

贈与契約書は必ず作って欲しいのですが、普段使っている子供の口座へ親が振込を行い、その後子供が自由に管理支配しているのであればその状況をもって贈与があったと主張しやすくなりますし、みなし贈与を主張することも可能です。

相続税法

第九条  第五条から前条まで及び次節に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。ただし、当該行為が、当該利益を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。

みなし贈与

結果的に利益を受けたのであれば意思の合致を立証しなくても、みなし贈与で贈与税の課税対象となるのです。贈与専門の通帳で引き出されることもなく利息も通帳に溜まっているような場合、『結果的に利益を受けている』とはいえませんので、みなし贈与を主張することもできません。

贈与専用の通帳は名義預金と指摘される原因とされやすいので、普段子供が利用している銀行口座か証券口座への贈与をするようにしてください。

 

3-4 贈与後の財産の管理処分は本人に任せる

4つ目のポイントは、贈与後の管理処分を本人に任せることです。

贈与をした財産はもはや自分のものではありませんので、管理処分を贈与した人に任せるのは当然のことですが、実際にはそのまま親が管理していることも多いのではないでしょうか。

贈与してしまうと無駄に使われてしまうのではないかというご心配はよくわかります。しかし、将来の相続税でどのくらいの資金が必要となるのか等の説明をきちんとしておけば、相続税支払に備えてきちんと貯金していてくれるのではないでしょうか。

それでも渡したら渡しただけ使ってしまうのであれば、渡しても良いと思う金額のみ贈与すれば良いでしょう。相続税のことを心配してどんどん生前贈与しても、それが無駄遣いで使われてしまうのであれば、今はまだ贈与する時期ではないのかもしれませんね。

 

誰の印鑑を用いているか、満期時の名義書換をだれが行っていたか等の状況から管理支配者が親であるとされてしまった事例があることは先ほどご説明したとおりです。

他にも相続後に管理支配が親であると立証されてしまう要因として『我が家の財産メモ』の存在があります。

 

財産メモから名義預金発覚

 

笑い話のようですが、実際にこのようなメモから名義預金であると指摘されてしまった事例はあるのです。

相続税の調査の際、財産を管理している金庫や引き出し等の中身を確認されるのですが、亡くなった方が作成していたメモですので相続人もその存在を知らず調査の当日にそのようなメモが見つかってしまうこともあるのです。

管理支配が名義人にないことが一目瞭然ですね。

 

3-5 贈与税の申告と納付を忘れずに

5つ目のポイントは贈与税の申告と納付になります。

贈与で財産を取得した場合、贈与税の課税対象となります。毎年1月1日から12月31日までに贈与で取得した財産が110万円を超える場合には翌年3月15日までに贈与税の申告と納付が必要となるのです。

110万円まで渡しても贈与税がかからないと認識されている方も多いのですが、あくまでも贈与で財産を取得した人が年間で110万円まで贈与を受けても贈与税がかからないというルールなのです。

 

贈与税の判断

例えば、孫が父方の祖父から110万円の贈与を受け、母方の祖父から110万円の贈与を受けたような場合には、年間で贈与によって取得した財産が220万円となりますので贈与税の申告と納付が必要になるのです。

民法上の贈与の成立の有無と贈与税の申告の有無は無関係です。しかし、『贈与で財産を渡した』と主張している額が年間110万円を超えているにもかかわらず贈与税の申告納付がされていなければ、税務署の調査官としては何としても『適切な課税を行おう!』という気持ちになってしまいます。

法律上は贈与税の申告納税と贈与の成立は無関係であっても、課税の現場レベルにおいては贈与税の申告納付をしていた方が現場調査官の心証がいいことは間違いありません。

また贈与税の申告と納付は贈与を受けた側が行うものですので、財産を贈与で取得した者が贈与税の申告納付を行うことは、すくなくとも受贈者側において贈与を受けた意思があることを表明することができるのです。

とはいえ、贈与税の申告と納付を過信するのは禁物です。贈与税の申告をしていたにもかかわらず、贈与契約書がない等の状況から『贈与が成立していなかった』とされた事例もあります。(平成19年6月26日裁決事例 名裁(諸)平18第74号)

贈与を後から主張するのであれば、やはり贈与契約書がなによりも有効です。

 

4. 今ある名義預金は適切に贈与しよう

すでに今まで作成してきた名義預金や疑わしい預金がある場合にはどうすれば良いのでしょうか。名義預金を作った方がお元気であれば今からでもまだ対策は可能です。

これまで名義を変えてきたことは『贈与』ではありませんので、今から改めて贈与契約を行い適切に財産を贈与していくことをお勧めします。

 

名義預金は改めて贈与

金額が110万円以下の名義預金であれば、今ある残高相当額を引き出して贈与すれば大丈夫です。贈与された側も一年間で他に財産の贈与を受けていないのであれば贈与税を考えなくても良いからです。『2-2贈与契約書を作成して贈与の事実を残す』を参考に贈与契約書を作成してください。

今ある名義預金の通帳と印鑑をそのまま渡すのはお勧めできません、なぜならば、事例で確認したとおりその通帳の設定を本人が行なっていないのであれば『名義預金』であると疑わしい通帳が残ることになります。贈与をする本人の普段使っている口座に振り込むか、名義預金の金額を全額引き出して現金で贈与するとよいでしょう。

誰に贈与するのかも検討してください。必ずしも名義預金の名義人に贈与する必要はありません。

相続人が相続開始前3年以内に被相続人から贈与でもらった財産については相続税の対象となってしまいます。亡くなる3年以内に子供に贈与した場合、相続税の対象となってしまいますので要注意です。相続人ではない孫に贈与すれば相続直前の贈与であっても相続税の対象とはなりません。

 

相続開始前3年以内の贈与

名義預金の金額が110万円を超える場合は少し工夫が必要です。なぜならば金額が大きい場合は贈与税の負担も考えて贈与を工夫する必要があります。財産の総額や贈与可能な期間、贈与する人数等から適切と思われる金額を贈与するようにしてください。

参考として贈与税の一覧をご確認ください。

贈与税一覧

名義預金の総額が600万円ほどで、まだまだ10年間は相続が発生しないと思われる場合は、100万円ずつ6年かけて贈与しても良いと思います。

将来の相続税が30%ほど見込まれる場合で少しでも急ぎたいのであれば3年で200万円ずつ贈与するのもいいでしょう。3年間で27万円の贈与税がかかってしまいますが、180万円の相続税を軽減することができます。(600万円×30%)

<生命保険の活用もお勧め>

 

短期間で贈与できないほどの名義預金があり、生命保険がない方の場合には生命保険を活用した相続税対策をお勧めします。

 

相続税の対象となる死亡保険金には非課税となる部分があります。

法定相続人の数 × 500万円

 

相続人が4人いれば2,000万円を非課税で次世代に残すことができるのです。

 

名義預金を作成した人がお元気で90歳以下の場合、今からでも生命保険に加入できる可能性があります。詳しくは『使わなきゃ損!相続税対策で保険を使い確実に節税する方法』をご参照ください。

 

相続対策保険

 

5. まとめ

名義預金について実際の事例をもとにご説明をしてきました。いかがでしたでしょうか。

財産の名義を変えれば大丈夫という安易な『対策』では通用しないことがご理解いただけたと思います。

贈与契約書を作成することは面倒臭いと思いますが、特に配偶者間での贈与の場合には契約書が不可欠です。

相続税の対策では相続発生後にできることは限られてしまいます。特に名義預金の場合には配偶者の軽減を利用するくらいですので、名義預金の存在に気づいたらできるだけ早く適切な対処をするようにしてください。

残された方が税務署とトラブルにならないよう、正しく適切な方法で相続税対策をするようにしましょう!