住宅取得資金の贈与は契約書の作成から!【贈与契約書ひな形付】

住宅取得資金贈与の契約書

住宅取得資金の贈与を受けたい!

憧れのマイホーム購入を税制が後押ししてくる制度、それが住宅取得資金の贈与です。

住宅取得資金の贈与を受けるにあたっては、贈与契約をきちんと締結する必要があります。口頭による贈与も法律上は有効ですが、金額が大きくなりますのできちんと贈与契約書を作成したいものです。

そこで今回は、住宅取得資金の贈与を受ける方を対象に、贈与契約書の作成方法をご案内します。

住宅取得資金の贈与は、手続きが厳密です。贈与のタイミングを誤ってしまって適用ができなくなるということがないよう、贈与実行前によく確認をするようにしてください。

 

1.贈与契約書を作成しよう

購入したい物件が決まり、不動産の売買契約が確実になった時点で贈与契約書の作成準備に取り掛かりましょう。

以下の3点が決まっていれば贈与税契約書を作成することができます。すでに決まっていることと思います。

  1. 贈与者と受贈者
  2. 贈与を受ける金額
  3. 贈与契約日

 

贈与契約書

贈与者〇〇(以下、甲という)と受贈者〇〇(以下、乙という)は、本日、以下の通り贈与契約を締結した。

第1条 甲は、金銭〇〇万円を乙に贈与するものとし、乙はこれを承諾した。

第2条 甲は第1条の金銭を乙の指定する金融機関口座に振り込むものとする。

上記の通り贈与契約が成立したので、これを証するため本契約書2通を作成し、甲乙がそれぞれ1部ずつ保存をするものとする。

平成  年  月  日

贈与者(甲)

住所:

氏名:

受贈者(乙)

住所:

氏名:

贈与を受ける金融機関の口座を贈与契約書に記載してもよいですし、あえて記載しなくても問題ありません。

お互いの贈与契約する意思が表示されていれば、細かい点は気にしなくても大丈夫です。

『〇年〇月〇日までに』と贈与の履行期間を表示するのもいいでしょう。少なくとも不動産引き渡しの前には振り込みをしてもらうようにしてください。

金銭の贈与を受ける場合の贈与契約書には印紙は不要です。ご安心ください。

 

2.贈与契約書作成のメリット・デメリットを理解する

なぜ贈与契約書を作成したほうがいいのでしょうか?

贈与契約書の一般的なメリットとデメリットを簡単にご説明します。

2-1.贈与契約書のメリット

贈与契約書のメリットは、なんといっても贈与契約の成立を簡単に立証できることにあります。

住宅取得資金の贈与の適用を受ける際に贈与税申告書に贈与契約書を添付する必要はないのですが、税務調査等で税務署と贈与の事実の有無についてトラブルとなった場合には、贈与契約書があると簡単に贈与の事実を立証することができます。

贈与とは、『あげます』『ありがとう』という意思の合致が必要な契約行為です。口頭による贈与契約も有効ですが、書面による贈与契約は取消ができないこととなっており、財産をもらう側にとっては贈与契約書があったほうが安心ですね。

後で作っておこうではなく、贈与を受ける前に作成しておき贈与契約時に押印をもらうようにしましょう。

 

2-2.贈与契約書のデメリット

住宅取得資金の贈与を受けるための贈与契約書であれば、適正に贈与契約書を作成していれば作成のデメリットはありません。

ただし、『贈与契約書』を偽造する等の仮装行為が税務署に立証されてしまうと、重加算税等のペナルティが課税される恐れもあります。

適正な贈与契約を書面に残す行為が贈与契約書の作成ですので、税務調査になってから偽造する等の行為は避けましょう。

 

3.住宅取得資金贈与の注意点

住宅取得資金の贈与は贈与税の特例です。

要件を満たさないと適用することができませんので、契約書作成する時点で改めて適用要件をご確認ください。

適用要件を満たさない場合には、通常の暦年課税による贈与税を負担することとなってしまいます。700万円の贈与で、贈与税88万円です。1,200万円の贈与では、贈与税246万円です。

暦年課税の贈与とされた場合の負担は重いですので、住宅取得資金の贈与の特例の要件についてはよく確認することをお勧めします。

 

3-1.贈与は不動産購入日前に終わらせておく

どんなに遅くとも不動産引き渡しの前日までには、贈与契約書を作成して贈与の実行を終えるようにしましょう。

住宅取得資金の贈与を適用するためには、贈与を受けた全額を住宅購入対価に充てる必要があるからです。

不動産購入後にされた贈与は一切アウトです!

贈与税非課税の適用を受けるための条件を満たさないからです。

預貯金の動きは税務調査等でも税務署はしっかりと確認をしてきます。たとえ契約が不動産購入前日となるように贈与契約書を作成していたとしても、資金の移動が不動産購入後であれば住宅取得資金の贈与は否認されてしまうのです。

住宅購入後に贈与を受けることが決まってしまった場合には、住宅取得資金の贈与を受けることができません。

『住宅取得資金の贈与』ではなく、家具等を購入してもらうことや暦年贈与を受けていく等の代替方法を検討するようにしてください。

暦年贈与について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
『相続税対策の王道!【生前贈与】で効果的に相続税負担を軽減する方法』

<親からの生活費援助も贈与税非課税>

扶養義務者相互間の生活費等の贈与で通常必要と認められるものは贈与税が非課税となっています。

 

一般的な生活用家具でしたら通常必要な生活費ということで贈与税の負担なしに援助を受けることが可能です。

 

生活費等の贈与であっても預貯金すると非課税とはなりません。現金で受け取り現金で家具等の購入に充てるようにしましょう。一緒に買い物に行って購入してもらうでもいいですね。

 

生活費等の援助として受けた金銭を住宅ローンの返済や株式等の購入資金に充てた場合、非課税ではなくなってしまいますのでご注意ください。

 

車の購入も一般的な生活費とはいえませんので、非課税と主張することは難しいと思われます。

 

3-2.配偶者の親族からの贈与は対象外!

配偶者の親が住宅取得を援助してくれる場合には、配偶者が贈与を受けるようにしましょう。この場合、配偶者も不動産の名義人に加えるようにしてください。

配偶者の両親と養子縁組をしているような場合を除き、義理の親や祖父母からの贈与の場合には住宅取得資金の贈与を適用することができないからです。

不動産の名義人とならない配偶者が住宅取得資金の贈与をうけても、贈与税非課税の対象とならないこととなっています。必ず住宅取得資金の贈与を受けた方も不動産名義人となるようにしてください。

 

<不動産の持分は資金負担割合で>
不動産の持分は、住宅購入資金を負担する金額に応じて決めるようにしてください。

 

例えば、5,000万円の住宅を購入する場合の資金内訳が以下の場合、配偶者の不動産持分は1/5となります。

  1. 配偶者:住宅取得資金の贈与1,000万円
  2. 本人:自己資金+住宅ローン4,000万円

簡単ですね!

 

上記のような負担割合にもかかわらず不動産名義を50%ずつとすると、本人から配偶者へ1,500万円の贈与があったこととされてしまいますのでご注意ください。

 

3-3.適用要件を再度確認しておこう

住宅取得資金の贈与は適用要件が非常に厳密です。これまでご説明した論点以外に特に謝りやすい点を下に挙げますので、再度確認してみてください。

  1. 贈与を受ける年1月1日で20歳以上であること
  2. 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること
  3. 平成21年から平成26年までに住宅取得資金の非課税を受けていないこと。
  4. 自己の配偶者や親族などからの購入、建築等でないこと
  5. 贈与された年の翌年3月15日までに住宅等を取得し居住していること
  6. 住宅家屋の床面積50㎡以上240㎡以下で、家屋の1/2以上を住宅とすること
  7. 取得日以前20年(マンション等は25年)以内に建築された家屋等
  8. 一定の書面を添付した贈与税の申告書を翌年3月15日までに提出すること

『非課税だから何もしない』では非課税の適用を受けることができません。贈与税申告は忘れずに行うようにしてください。

贈与された年の翌年3月15日までに居住していない場合であっても、同日後遅滞なく居住することが確実な場合は適用を受けることが可能です。

贈与された年の翌年12月31日までに居住していない場合には適用を受けることができません。適用を受けていた場合には修正申告等が必要となりますので、贈与のタイミングが早すぎない方がいいですね。

所得については給与以外の所得も含めて2,000万円以下かどうかが判断されます。合計所得金額について知りたい方は、以下の<合計所得金額とは>をご確認ください。

<合計所得金額とは>

 

合計所得金額とは、損失の繰越控除前の所得金額の合計となります。

 

所得とは『儲け』です。会社員の方の場合、給与収入から給与所得控除を控除した金額が所得となります。給与所得控除の上限は現在220万円ですので、給与収入2,220万円を超える方は住宅取得資金の贈与で非課税を受けることができません。

 

譲渡所得で特別控除を受ける場合には特別控除前の金額となります。古い自宅を売却して確定申告する場合は3,000万円控除前の譲渡所得と給与所得等の合計が2,000万円以下かどうかの確認をするようにしてください。

 

特定口座での株式等の売買で確定申告をしないものは所得に含めません。

 

株式等の損失を繰り越すために確定申告をする場合は問題ありませんが、過去の損失を今回の所得から控除するために確定申告する場合には合計所得金額2,000万円以下になるかどうかをよくご確認ください。

 

株式等の譲渡所得を含めると合計所得金額2,000万円超えそうな場合には、以下のいずれかの対応が必要となります。

  1. 株式等の譲渡所得を確定申告しない(繰越控除をしない)
  2. 複数の特定口座の所得のうち一部の証券会社の口座のみ申告する
  3. 住宅取得資金の贈与の特例をあきらめる

 

4.まとめ

住宅取得資金の贈与を受けるための契約書についてご説明をしてきました。

贈与契約書がなくても贈与契約自体有効となりますが、後日のトラブルに備えて贈与契約書を作成するようにしましょう。

贈与契約書があればいいというわけではありません。贈与する、贈与をうけるというお互いの意思を書面に残すものが贈与契約書です。

住宅取得資金の贈与の適用条件についても再度ご確認ください。適用要件を満たさない場合、通常の暦年課税での贈与税が課税されてしまいます。後悔することがないよう事前にしっかりと確認するようにしてください。