【台風の被害者必見】資産の損害による損害保険金に税金はかからない

損害保険金 税金

地震や台風等によって損害保険金を受け取った方は、その収入を申告すべきか悩みますよね?

ご安心ください!

資産の損害に伴う損害保険金は非課税です!

非課税ですので、確定申告をしない方はそれほど気にする必要はありません。

不動産賃貸等の収入がある方の場合は、どのように申告をしたらよいのか悩まれている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、地震や台風等によって損害保険金を受けた場合の確定申告について簡単にご案内いたします。

事故等によって受け取った損害保険金も考え方は同様ですので、昨年にそのような保険金を受け取った方は参考にしてください。

 

1.資産の損害による損害保険金は非課税

結論は非課税なのですが、以下の2通りのパターンで詳細にご案内いたします。

  1. 自宅や自家用車などで受けた損害保険金
  2. 賃貸不動産や個人事業店舗等の損害保険金

自宅などの家事用資産で受けた損害保険金と賃貸不動産などの事業用資産で受けた損害保険金とでは確定申告の手続きが異なるからです。

 

1-1.自宅や自家用車で損害を受けた場合は申告不要

自宅や自家用車等の損害で保険金を受け取った方は、申告手続きが簡単です。

確定申告の時に何ら考慮する必要がありません

会社員や年金のみの収入の方で毎年確定申告をしていない方は、今年も確定申告をしなくて大丈夫です。

医療費控除や寄附金控除を受けるために確定申告している方は、例年通りの申告をすればOKです。

以上、終了~ ということになります。

 

本当かよ?と疑問に思われる方は、所得税法の第九条で非課税が定められていますのでご確認ください。

所得税法

(非課税所得)
第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない
一から十六 略

十七 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第四項(定義)に規定する損害保険会社又は同条第九項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの

税法は読みにくいのです。

その他の政令で定めるものとは、所得税法施行令の第三十条に規定されています。

 

所得税法施行令

(非課税とされる保険金、損害賠償金等)

第三十条 法第九条第一項第十七号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)は、次に掲げるものその他これらに類するもの(これらのものの額のうちに同号の損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分)とする。

一 損害保険契約(保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第四項(定義)に規定する損害保険会社若しくは同条第九項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約又は同条第十八項に規定する少額短期保険業者(以下この号において「少額短期保険業者」という。)の締結したこれに類する保険契約をいう。以下この条において同じ。)に基づく保険金、生命保険契約(同法第二条第三項に規定する生命保険会社若しくは同条第八項に規定する外国生命保険会社等の締結した保険契約又は少額短期保険業者の締結したこれに類する保険契約をいう。以下この号において同じ。)又は旧簡易生命保険契約(郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第百二号)第二条(法律の廃止)の規定による廃止前の簡易生命保険法(昭和二十四年法律第六十八号)第三条(政府保証)に規定する簡易生命保険契約をいう。)に基づく給付金及び損害保険契約又は生命保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金で、身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(その損害に基因して勤務又は業務に従事することができなかつたことによる給与又は収益の補償として受けるものを含む。)

二 損害保険契約に基づく保険金及び損害保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金(前号に該当するもの及び第百八十四条第四項(満期返戻金等の意義)に規定する満期返戻金等その他これに類するものを除く。)で資産の損害に基因して支払を受けるもの並びに不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金(これらのうち第九十四条(事業所得の収入金額とされる保険金等)の規定に該当するものを除く。)

三 心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金(第九十四条の規定に該当するものその他役務の対価たる性質を有するものを除く。)

資産の損害によって受け取った保険金だけでなく、事故によって支払いを受ける損害賠償金や相当の見舞金も所得税が非課税ですのでご安心ください。

資産の損害だけでなく、身体の傷害に起因して支払いを受ける保険金や損害賠償金も非課税です。医療保険や事故による損害賠償金には税金がかかりませんのでご安心ください。

 

1-2.事業用資産の損失で受け取った損害保険金は必要経費を減額する

1-2-1.修繕をした場合は、修繕費を減額する

賃貸不動産の屋根が吹き飛んだ…

事業用店舗の窓が割れた…

そのような場合、通常は修繕をされていることと思います。

申告書見本

このような場合、工務店等に支払った費用を修繕費として必要経費に算入しますが、受け取った保険金を控除することになりますのでご注意ください。

修繕にかかった費用が30万円で、損害保険金を20万円受け取った場合、差し引きの10万円が修繕費の金額となります。

 

修繕にかかった費用が30万円で、損害保険金を30万円以上受け取った場合は、修繕費は0円となります。自分の負担がないので当然といえば当然です。

このような場合の『おつり』といいますか、保険差益が出た場合はどうするのか?

非課税ですのでご安心ください。

所得税法施行令

(非課税とされる保険金、損害賠償金等)

第三十条 法第九条第一項第十七号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)は、次に掲げるものその他これらに類するもの(これらのものの額のうちに同号の損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分)とする。

『1-1.自宅や自家用車で損害を受けた場合は申告不要』で非課税の条文をご案内しましたが、事業用資産で修繕費を上回る保険金も同様に考えればよいわけです。

 

1-2-2.資産が全壊あるいは取り壊しの場合

建物の全壊や取り壊しをしたような場合の保険金も考え方は同様です。

  1. まずは必要経費に算入する金額から控除
  2. 控除しきれない金額は非課税

 

『どうせ入居者も少なかったし、もう不動産賃貸はやーめた。』というような場合ですね。

このような場合にはお金の支出はありませんが、資産損失として固定資産の帳簿価額相当額を必要経費に算入することができます。

所得税法
(資産損失の必要経費算入)
第五十一条 居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業の用に供される固定資産その他これに準ずる資産で政令で定めるものについて、取りこわし、除却、滅失(当該資産の損壊による価値の減少を含む。)その他の事由により生じた損失の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額及び資産の譲渡により又はこれに関連して生じたものを除く。)は、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。

帳簿価額200万円の建物が損壊して取り壊した場合は、200万円を資産損失として必要経費に算入することができます。

損害保険金として120万円を受け取っていた場合には、必要経費は差し引きの80万円ということになります。

帳簿価額が1円で保険金額120万円受け取っていた場合には、必要経費0円、保険差益の199万9,999円は非課税ということになります。

 

帳簿価額というのは減価償却を控除した後の固定資産の価額のことをいいます。資産損失の金額は、取り壊しをした時点で売却をしていたとした場合の譲渡所得の取得費相当額とされていますので、10月に取り壊した場合は10ヶ月減価償却をしてその時点の帳簿価額が資産損失の金額の基となります。

 

2.確定申告は国税庁ホームページで作成可能

確定申告は国税庁のホームページで作成可能です。

参照:国税庁

ガイダンスに沿って必要事項を入力していくと作成ができます。

会社員向けではありますが、所得税作成コーナーを利用して所得税の確定申告書を作成する方法を別の記事にてご案内しておりますので参考にしてください。

所得税作成コーナーを使って確定申告書をご自分で作成される方は、以下の記事をご参照ください。
『会社員が確定申告すべき場合&還付を受けるための申告を徹底解説!』

 

3.注意点

3-1.保険はすべて非課税というわけではない

この記事では、資産の損害に伴って保険金を受け取った場合についてご案内しております。

くれぐれも、保険金は非課税なのだと安易に判断することがないようにしてください

保険金であっても、満期で受け取った保険金や一般的な生命保険金には税金がかかります。

保険料負担者と保険金受取人が同一であれば所得税、別人であり保険料負担者が生存中の場合は贈与税、亡くなった方が保険料を負担していた保険金を受け取った場合には相続税の対象となります。ややこしいですね。

保険金を受領する場合には、保険会社に確定申告が必要かどうかを確認することをお勧めします。

 

3-2.不動産所得や事業所得が赤字の場合は他の所得と通算可能

賃貸不動産を取り壊して資産損失した場合に、不動産所得がマイナスとなった場合は他の所得(給与所得や雑所得など)と通算をすることができます。

これを損益通算といいます。

同一年中の他の所得がある場合には、他の所得(不動産や株式等の譲渡などの分離課税を除きます)と相殺することができるわけです。

事業所得のマイナスも損益通算が可能です。

不動産所得で損失が出た場合は、土地を取得するための負債利子相当額は他の所得と通算ができませんのでご注意ください。詳しくは国税庁ホームページでご確認ください。

参照:国税庁

3-3.損益通算後の損失は3年間繰り越しが可能

保険金を受け取っていれば大きな損失が出ることはまれだと思いますが、同年中の他の所得を通算してもなお損失が残る場合は、3年間の繰り越しも可能です。

これを純損失の繰越控除といいます。

純損失の繰越控除をするためには、所得税の確定申告を期限内(翌年3月15日まで)に行う必要がありますのでご注意ください。

青色申告をしていない場合は、純損失の金額のうち変動資産の損失の金額と被災事業用資産の損失の金額のみしか繰越控除することができませんのでご注意ください。

該当する方は税務署や税理士等の専門家にご相談することをお勧めします。

 

4.まとめ

自宅や自家用車の損失によって保険金を受け取った場合は、所得税が非課税となります。

非課税ですので確定申告をする必要はありません。

賃貸不動産や事業用店舗などの資産の損失によって保険金を受け取った場合は、必要経費を減額する必要があります。

修繕費や資産損失などの必要経費を計上するときに受領した保険金相当額を控除するのを忘れないようにしてください。

事業用資産の損失でかかった費用よりも受け取った保険金の方が多い場合には、その差益は非課税となりますのでご安心ください。

保険金はすべて非課税というわけではありません。満期保険金や死亡保険金には税金が課税される場合もありますのでご注意ください。

保険金を受領していてもなお大きな損失が出るような場合、他の所得との通算や3年間の繰越も可能です。繰越控除をするためには期限内に確定申告が必要ですのでお早目に手続きをすることをお勧めします。