『まさか、こんなことになるなんて…』
今このタイミングでも日本国内では新たな不幸が生まれていることと思います。
交通事故、傷害事件や死亡事件、火事、大雨による土砂崩れや河川の氾濫、地震…
仕事ができなくなってしまうことや、最悪は亡くなってしまうこともあるでしょう。
元気な時には想像もできないような経済的負担があなたや残された家族に襲いかかってくるかもしれません。
どのような状態のときに社会保障を受けることができるのかご存知でしょうか。
日本には非常に多くの社会保障が整っていると感じます。ところが制度が多く複雑ゆえに社会保障について網羅的にご存知の方はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。
ほとんどの社会保障には申請が必要となります。つまり制度があることを知らなければ受給できるお金も受給することができないのです!
社会保障の受給権にも時効がありますので申請期限後に知ったとしても一切受給することができません。
非常に手厚い社会保障の受給要件を満たしているにもかかわらず、知らないが故に受給しないというのは不幸ですよね。
そこで今回は、会社員とその家族が受けることができる社会保障制度についてご説明いたします。どのような時にどのような社会保障を受けることができるのかを知って、ぜひご家族と情報共有するようにしてください。社会保障で手当てされないような不幸への準備方法もご紹介いたします。
あなたと大切な家族のために社会保障制度を理解し、万が一必要となった際には適切に制度を活用できるようにしてくださいね。
1. 会社員の社会保障は非常に充実している
会社員のみなさんは社会保障の点で非常に優遇されているのですが、そのことに気がついている方は意外と少ないのではないかと思います。
たとえば、厚生年金や健康保険の保険料については半分が会社負担となっています。
失業した際には雇用保険から失業手当を受給することもできます。
産休中や育児休業中の社会保険料は免除されますし、給与が出ない場合には給与の補填として出産手当金や育児休業給付金を受け取ることもできます。
ケガや病気で仕事ができずに給与をもらえなくなってしまった場合には、傷病手当金として最長1年6ヶ月間にわたって給与の補填を受けることができます。自営業にはそのような制度はありません。
業務上や通勤途中のケガや病気は労災保険で本人負担なしで医療を受けることができ、障害状態となった際にも労災で手厚く保障を受けることができます。
業務外の原因で障害状態となった場合の障害年金や遺族が受け取る遺族年金、さらに将来もらうことになる厚生年金の金額も自営業の方と比べると受給できる金額が多くなるのです。
簡単にご説明しましたが、このように会社員の方の社会保障は非常に優遇されています。
このほかにも出産や育児、介護や老後にも様々な社会保障制度があります。どのような場合にどのような社会保障を受けることができるのかを簡単にまとめてみましたのでご確認ください。
非常に複雑ですよね。
制度が複雑ゆえに自分がどの社会保障制度を利用するべきなのかがわからないと適切な保障を受けることができません。
例えば業務上のケガが原因で病院に通った場合であっても、健康保険証を出して『ちょっとケガしました』と言えば3割負担の治療費が病院から請求されることでしょう。しかしそれでは問題ありです。労災保険で自己負担なしで治療を受けるのが正解です。健康保険の不正利用となりますので損得の問題ではないのです。
業務中のケガが原因で亡くなった場合は、遺族は厚生年金による遺族年金に加えて労災保険からも遺族年金をあわせて受給することができます。くどいようですが、請求しなければ何ももらえません!
家族のためにも社会保障を正しく理解して、情報共有しておくことを強くお勧めします。
本記事の使い方
具体的な社会保障の内容と必要となる手続きについて、これから『2. ケース別 受けることができる社会保障と必要手続き』で一つずつ丁寧にご説明いたします。
日本の社会保障は非常に複雑ですので一度に全て読むのは大変だと思います。
特に興味があるところだけでもしっかりと理解しておいてくださいね。こんな時どうしようと辞書のように使っていただければ幸いです。
・通勤中や業務中にケガをしてしまった場合、業務が原因の病気となった場合
・業務外のケガや病気で医療費を支払った場合
・会社員であるご家族が死亡してしまった場合
・出産をする場合、産休を取得した場合
・育児をする場合、育児休業を取得した場合
・失業をした場合、失業中にスキルアップしたい場合
・スキルアップには教育訓練給付金がもらえる』
・ご家族の介護をする場合、介護休業を取得した場合
・障害が残ってしまった場合
・60歳定年を迎えた場合
2. ケース別 受けることができる社会保障と必要手続き
2-1. 通勤中や業務中のケガや病気の場合の社会保障
病院の診察を受ける際には、通勤中や業務中のケガ、業務が原因となった病気であるかどうかを意識して受診をするようにしてください。
<注意点>
通常病院では健康保険証を出して診察を受けることと思いますが、業務が原因となる診察では労災保険の対象となるからです。
2-1-1. 通勤中や業務中のケガや病気の医療費は労災で自己負担なし
会社の従業員が通勤中や業務中にケガをしてしまった場合や業務が原因となる病気になってしまった場合には、労災保険の適用を受けることになります。この場合の医療費は全額労災から補填されるため自己負担額はありません。
<注意点>
会社の役員は社会保険の被保険者となっていても労災保険の適用とはなりません。労働者の災害を保障する制度だからです。
パートタイマーのような短期的な勤務であっても労働者に変わりはありません。業務中や通勤中のケガや病気は労災の適用を受けることができます。
<手続き>
具体的な手続きなのですが、治療する医療機関が『労災保険指定医療機関』であるか否かによって異なります。
治療する医療機関が労災保険指定医療機関かどうかは厚生労働省のホームページで確認することが可能です。大きな総合病院はだいたい指定医療機関とされているようです。街中の小さなクリニックであっても数多くの指定医療機関があります。
<労災保険指定医療機関での治療の場合>
労災保険指定医療機関で治療を受ける場合、受付の際に業務中あるいは通勤中のケガや病気であることを説明すれば大丈夫です。窓口で医療費を支払う必要はありません。
<労災保険指定医療機関でない医療機関で治療の場合>
労災保険指定医療機関でない医療機関で治療を受ける場合には、一度窓口で医療費を全額支出した後にご自分で労働基準監督署に費用請求をする必要があります。詳しい手続きは厚生労働省の療養(補償)給付の請求手続をご確認ください。
労災保険指定医療機関でない医療機関を受診する際にも労災の適用を受ける旨を窓口でしっかりと伝えてください。一度健康保険証を提出して健康保険の適用を受けてしまいますと、健康保険へ7割部分の返還をするという余計な手間がかかってしまいます。
2-1-2. 仕事ができなくなった場合には給与の補填がある
業務中や通勤中のケガや病気で仕事をすることができなくなった場合には、労災から給与の補填を受けることができます。以下の要件を満たす必要があります。
- 通勤中や業務中のケガ、業務を原因とした病気であること
- 療養のために仕事をすることができないこと
- 給与の支払いを受けないこと(平均賃金の60%未満の給与であればOK)
<注意点>
通勤中か業務中かを間違えないようにしてください。受給できる金額が3日分だけ異なってくるからです。
通勤中のケガについては『通勤災害』として、療養のための休業4日目から平均賃金の8割が補填されます。(休業給付6割+特別支給金2割)
業務中のケガや病気については『業務災害』として休業1日目から3日目までは会社から平均賃金の6割の支払いを受けることができます。休業4日目からは通勤災害と同様に労災から平均賃金の8割の補填を受けることができます。(休業補償給付6割+特別支給金2割)
休業期間は連続した3日間でなくても構いません。
<注意点>
あくまでも給与の補填ですので、休業によって給与の支給を受けないことが前提となります。休業中も通常通りに給与を受け取ることができるのであれば補填を受けることはできません。有給休暇をつかうと給与の支払いがあったものとされてしまいますので注意してください。
休業した日の給与が平均賃金の60%未満の場合には給与の支給を受けないことと同様に扱われます。平均賃金の50%の給与の支払いを受ける場合であっても給与が出ない場合と同様に平均賃金の80%の補填を受けることができるなんて非常に手厚いですね。
通勤中に寄り道をしているケースなどで通勤災害として認定されないこともあります。うつによる自殺など業務災害であるかどうかはなかなか判断に迷うことと思われます。具体的に労災事故で判断に迷った時には労務問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
<手続き>
労災の給付手続きには、事業主の証明と主治医の証明が必要となります。通常の会社であれば給付申請の手続きは会社が行ってくれますので、診療を受けた病院で医師の証明をもらってきて会社に渡せば大丈夫です。
労災による補償は業務ができないと証明を受ける間は原則として支給を受け続けることができます。会社を辞めた後でも同様です。非常に手厚いですね。療養開始後1年6ヶ月経過した時点で治っていない場合には休業給付や休業補償給付に代えて労災から傷病年金や傷病補償年金を受けることができます。傷病年金や傷病補償年金については『2-9-1 業務が原因で障害となった場合には労災で手厚く補償』でご説明いたします。
<会社を辞めた後の手続き>
会社を辞めた場合には自分で労働基準監督署に申請を行う必要があります。どこの労働基準監督署でもよいのではなく、会社の所轄労働基準監督署に提出をする必要があります。退職前に会社に確認をしておくと良いですね。退職後の給付には会社の証明は不要となりますが主治医の証明は必要です。
休業した日から2年経過してしまいますと請求することはできませんのでご注意ください。
療養期間が長期に渡る場合には1ヶ月ごとに請求することが一般的です。厚生労働省のホームページから請求書をダウンロードしてご利用ください。
<平均賃金とは>
平均賃金とは労災の支給を受ける労働者の災害前3ヶ月間の賃金総額をその期間の日数で除した金額とされています。
賃金総額には基本給だけでなく家族手当等の諸手当や通勤手当も含み、所得税や社会保険料を控除前の賃金総額となります。
業務する1日あたりの平均賃金ではなく、土日等の休日を含めた1日あたりの平均賃金ということになります。
たまたま災害前3ヶ月間の間に賞与の支給があった場合には賞与の金額は含みません。四半期ごとに支払われる賞与は平均賃金算定の基になりますが、なかなかそのような会社はないですよね。
2-2. 業務外のケガや病気の場合の社会保障
労災の対象とならない業務外のケガや病気については、健康保険から補償を受けることができます。
制度としては大きく以下の3つになります。
- 窓口での自己負担が医療費の3割で済む
- 1ヶ月の医療費には自己負担の限度額がある
- 仕事ができない場合には傷病手当金を受けることができる
窓口での3割負担はみなさんご存知のことと思いますので、それ以外についてご説明いたします。
2-2-1. 1ヶ月の上限を超えた医療費は戻ってくる
病院や薬局で支払う保険医療には1ヶ月間の自己負担に上限が設けられています。自己負担額が1ヶ月の限度額を超えた場合には、高額療養費として上限額を超えた額の支給を受けることができるのです。
<注意点>
高額療養費は健康保険の対象となる医療が対象ですので、入院時の食事負担や差額ベット代、インプラント等自費の治療費は対象となりません。
1ヶ月の限度額は年齢や所得によって異なります。69歳以下の方の場合は以下のようになります。
適用区分 | 1ヶ月の上限額(世帯金額) |
住民税非課税の方 | 35,400円 |
〜年収約370万円 | 57,600円 |
年収約370万円〜770万円 | 80,100円+(医療費−267,000)×1% |
年収約770万円〜1,160万円 | 167,400円+(医療費−558,000)×1% |
年収約1,160万円〜 | 252,600円+(医療費−842,000)×1% |
70歳以上の方の自己負担額については、厚生労働省のホームページでご確認ください。
<具体例>
例えば年収500万円ほどの会社員の方が同じ医療機関で1ヶ月に30万円の窓口負担をした場合、限度額は80,430円となります。
80,100円+(300,000 − 267,000)×1% = 80,430円
一度窓口で30万円の支払いをしたのちに上限額80,430円を超えた219,570円が高額療養費として戻ってくることになるのです。非常に手厚いですね。
<注意点>
あくまでも1ヶ月の窓口負担の上限であることに注意してください。たとえば同じ前提で月末と翌月初に15万円ずつ窓口負担をした場合には、それぞれの月の限度額は80,100円となりますので戻ってくる額は139,800円となります。
同じ治療をうけて窓口負担の合計が同じであったとしても、支払いをする月が同じかどうかで随分と変わってきてしまいますね。
緊急でない入院は月初にした方が良いかもしれませんね。
<注意点>
健康保険の被保険者である会社員本人だけでなく、扶養となっている専業主婦や子供の窓口負担も合算することができます。69歳以下の受診については一つの医療機関について2万1千円以上の自己負担をしないと合算することができません。2万円の窓口負担を10ヶ所で支払っても戻ってくる金額はないことになります。
<一つの医療機関とは(69歳以下の場合)>
○○病院の内科と外科で診療を受けたような場合には合算して2万1千円以上の自己負担となっていれば高額療養費の対象となる1ヶ月の自己負担額とすることができます。
同じ病院であっても歯科については単独で2万1千円以上の窓口負担があった場合のみ高額療養費の対象となります。同じ内科であっても入院と外来はそれぞれ2万1千円を超えたもののみが高額療養費の対象となります。
<手続き>
必要となる手続きはご加入の健康保険組合によって異なります。ご加入の健康保険組合や協会けんぽの都道府県支部などにお問い合わせください。医療費の領収書が必要となる場合もありますのできちんと保管しておいてください。
条件を満たした場合に健康保険組合から連絡がくることが多いようですが、そうではない健康保険組合もありますので医療費が多かった月についてはご加入の健康保険組合等に確認をしてみてください。
高額療養費の支給は、診療を受けた月の翌月から2年間請求が可能です。
2-2-2. 仕事ができない場合には1年6ヶ月間は補償を受けられる
病気等によって一時的に仕事に就くことができず給与がなくなってしまった場合には健康保険から傷病手当金として1年6ヶ月間は補償を受け取ることができます。
健康保険から傷病手当金を受けるためには以下の4つの条件が必要です。
- 業務外の事由によるケガや病気のため療養が必要であること
- 仕事をすることができないこと
- 3日間連続して仕事を休み、その後も休んだ日があること
- 休業中の給与の全部又は一部の支払いがないこと
<注意点>
健康保険ですので業務外のケガや病気が対象となります。業務に関するケガや病気は労災の対象となりますので、『2-1-2. 仕事ができなくなった場合には給与の8割が補填』をご確認ください。
労災とは異なり健康保険の傷病手当金の場合は、連続して3日間仕事を休むことが条件となっています。3日連続して休んだことを『待期完成』と言います。待期完成のための3日間の休業は土日祝日などの会社の休業日や有給休暇での休業でも良いこととなっています。
病気になった金曜日に有給休暇で仕事を休んだ場合であれば、土日を自宅で療養すれば待期完成の条件を満たすことになります。
<注意点>
待期完成に必要となる3日間については傷病手当金は支給されません。傷病手当金は待期完成後、療養4日目から1日ごとに支給が行われます。
傷病手当金は給与が出ない場合の生活保障ですから給与の支払いがないことが前提となります。給与の支払いがあった場合であっても傷病手当金の日額よりも少ない場合には、その差額のみが支給されることになります。
傷病手当金の支給期間は支給開始した日から最長で1年6ヶ月となっています。同じ病気やケガで再度療養が必要となった場合であっても支給開始した日から1年6ヶ月を超えた休業については補償されません。
傷病手当金の日額は、月額の社会保険料の標準報酬月額を30で割ってその2/3の額とされています。おおよそ給与の2/3がもらえるんだなと理解いただければ結構です。
<標準報酬月額とは>
会社員の健康保険については給与の額によって健康保険の標準報酬月額が定められています。ご加入の健康保険に標準報酬月額表という表があるかとおもいますのでそちらで確認をしてみてください。
協会けんぽの場合、標準報酬月額は原則として毎年4月から6月の給与をもとに決定され年金事務所から会社に通知されます。給与には諸手当や交通費等の支給も含まれます。
平成29年度の協会けんぽの標準報酬月額表は協会けんぽホームページで確認することが可能です。
<手続き>
傷病手当金の手続きについてはご加入の健康保険組合や協会けんぽの都道府県支部にお問い合わせください。通常は会社の証明と医師の証明が必要になります。
傷病手当金は療養した日ごとに2年間経過してしまいますと請求することができませんので、早めに手続きをするようにしてください。
2-3. 死亡の場合の社会保障
給与を得ていた会社員が亡くなってしまった場合、残された家族の生活を保障するために遺族年金という制度があります。
通勤中のケガや業務に関連する病気が原因で亡くなった場合には、労災による遺族年金を受けることができます。
会社員が亡くなった場合には、厚生年金による遺族年金を受けることができます。
2-3-1. 通勤中や業務中のケガや病気が原因でなくなった場合の遺族年金
労災事故が原因で亡くなった場合には労災保険から遺族年金を受けることができます。労災の遺族年金は非常に手厚い内容となっています。
奥さんが受給者の場合には年齢要件がなく生きている限り一生受け取ることができるのです。
また遺族年金を受給していた奥さんが亡くなった場合であっても次の受給権をもつ子供や父母、孫などが引き続いて遺族年金を受け取ることができるのです。これを転給といいますが労災による遺族年金のみの制度です。非常に手厚いですね。
厚生年金の遺族年金を受給する場合であっても、労災事故が原因でなくなった場合には労災の遺族年金も合わせて受給することができるのです。
遺族年金を受給できるのは亡くなった労働者に生計を維持されていた遺族です。受給対象となる者とその優先順位は以下のように定められています。年齢は労働者が亡くなった時点での年齢となります。
- 妻、夫(60歳以上又は一定の障害がある場合)
- 子供(18歳になった後の3月31日まで)又は一定の障害がある子供
- 父母(60歳以上又は一定の障害がある場合)
- 孫(18歳になった後の3月31日まで)又は一定の障害がある孫
- 祖父母(60歳以上又は一定の障害がある場合)
- 兄弟姉妹(18歳になった後の3月31日まで)又は一定の障害がある兄弟姉妹
- 夫(55歳以上60歳未満)
- 父母(55歳以上60歳未満)
- 祖父母(55歳以上60歳未満)
- 兄弟姉妹(55歳以上60歳未満)
労災の遺族年金に男女平等という考え方はないようです。会社員の男性が亡くなった場合に奥さんは一生遺族年金を受け取ることができるのに対し、会社員の女性が亡くなった場合に夫は55歳以上でないと遺族年金を受給することができません。
遺族年金は、亡くなった方の月給をベースとした遺族年金と亡くなった方のボーナスをベースとした遺族特別年金の合計となります。わかりやすく説明するためにまとめて遺族年金としてご説明いたします。
遺族年金の受給額は受給する遺族の人数によって変わってきます。妻や夫が受給者の場合には遺族の人数は1人となります。2人以上の受給者となるのは子供や父母などの場合になります。
遺族の人数 1人 基礎日額の153日分(55歳以上の妻や一定の障害がある妻の場合は175日分)
遺族の人数 2人 基礎日額の201日分
遺族の人数 3人 基礎日額の223日分
遺族の人数 4人以上 基礎日額の245日分
<基礎日額とは>
遺族年金の金額は亡くなった方の給与とボーナスによって変わってきます。
亡くなった方の給与とボーナスの実績をもとに基礎日額が計算されます。
事故の前3ヶ月間の平均日給(給付基礎日額)と、事故の前一年間のボーナスを365で割った1日あたりのボーナス(算定基礎日額)の合計を基礎日額と表示しております。
<注意点>
会社員の方が業務関連の原因で亡くなった場合には、労災の遺族年金のほか遺族基礎年金、遺族厚生年金もあわせて受給することができます。この場合、労災の遺族年金の受給額に調整が行われるようになっています。
国民年金及び厚生年金をあわせて受給する場合、遺族年金の受給額は0.80の調整率がかけられることになります。
詳しくは厚生労働省のホームページをご確認ください。
<遺族年金の受給者がいない場合>
労災の遺族年金の受給対象となる方がいない場合には、遺族年金の支払いに代えて遺族一時金を受けることができます。
遺族はいるけれども生計維持の要件や年齢要件を満たさないようなケースです。具体的には労働災害で女性が亡くなった時点で、夫の年齢が54歳、子供が20歳というような場合です。
遺族一時金の受給対象となる方と優先順位は以下のとおりです。
- 配偶者
- 生計を維持していた子・父母・孫・祖父母
- その他の子・父母・孫・祖父母
- 兄弟姉妹
遺族一時金の受給額は、基礎日額の1,000日分となっています。
<遺族年金と遺族一時金両方もらえるケースも>
ごく稀だとは思いますが遺族年金を受け取っていた場合であっても遺族一時金を受け取ることができるケースもあります。
夫が労働災害で亡くなった後に遺族年金受給者の妻が亡くなり、その後子供が18歳を超えたような場合です。
転給によってすべての遺族年金受給者がいなくなってしまったような場合ということができます。
『遺族年金受給金額の累計が遺族一時金の金額よりも少ない場合』にはその差額を遺族一時金として受けることができるのです。
労災保険の遺族年金の制度は複雑ですが、非常に労働者の遺族にとって手厚いですよね。
<遺族特別支給金>
なんとさらに、遺族年金や遺族一時金の受給者には遺族特別支給金という一時金300万円を受給することができるのです!
<労災遺族年金等の手続き>
かなり手厚いこれらの遺族年金も請求しなければ何も受け取ることができません。業務災害が原因で亡くなった場合には会社の所轄労働基準監督署に必ず申請をするようにしてください。
申請にあたっては事業主の証明や死亡診断書、亡くなった方との関係を証明する戸籍謄本等が必要となります。事前に労働基準監督署で確認をしたほうがよいですね。詳しくは厚生労働省のホームページをご確認ください。
亡くなってから5年経過してしまいますと遺族年金等の受給を受けることはできませんので早めの手続きをお勧めします。
2-3-2. 会社員が亡くなった場合の遺族年金
会社員が業務外のケガや病気が原因で亡くなった場合には、残された遺族は遺族年金を受けることができます。遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金の2つがあります。
遺族厚生年金は遺族基礎年金と比べて受給対象者が広く設定されています。年金保険料の払い損とならないように制度を設計しているものと思われます。
会社を辞めて厚生年金の被保険者でなくなった場合であっても、会社員のうちに初診を受けた傷病等が原因で初診から5年以内に亡くなった場合には遺族厚生年金を受けることができます。
遺族基礎年金と遺族厚生年金を両方受給できるのは亡くなった方に生計を維持されていた以下の遺族に限られています。
・『子』のある妻、『子』のある55歳以上の夫
・『子』
『子』とは原則として18歳になった後の3月31日までの子供に限られます。1級2級の障害がある子供については20歳未満の子供に限られます。
遺族に配偶者と『子』の両方がいる場合には、『子』の遺族年金も含めて配偶者に支払いが行われます。
遺族厚生年金のみを受給できる受給者は、亡くなった方に生計を維持されていた以下の遺族に限られます。優先順位は以下のとおりです。
- 『子』のない妻、『子』のない55歳以上の夫
- 55歳以上の父母
- 孫
- 55歳以上の祖父母
『子』の定義は先ほどの説明と同様です。これらの受給可能な遺族のうち上位の方が遺族年金を受給することになります。
『子』のいない30歳未満の妻については5年間しか遺族年金の給付を受けることができません。若いのだから早く人生やり直しなさいという趣旨なのだと思われます。
遺族基礎年金の金額は、非常にシンプルです。
『子』のいる配偶者が受ける遺族基礎年金は、年間78万100円に『子』の加算額を加えた額となります。
『子』の加算額は1人目や2人目の『子』は22万4,500円、3人目以降は1人あたり7万4,800円となります。
配偶者がいない場合で『子』が受け取る場合には、年間78万100円に2人目以降の『子』の加算額を加えた額となります。
老齢厚生年金の金額は、厚生年金を受給したとした場合の報酬比例部分の3/4となっています。
<具体例>
平均の標準報酬月額が35万円の会社員男性が亡くなった場合、配偶者と子供が1人が受け取る遺族基礎年金と遺族厚生年金の目安は合計で月額およそ13万円、配偶者と子供2人が受け取る遺族年金の目安は月額およそ14.9万円となっています。
詳しくは日本年金機構のホームページでご確認いただくか、心配な方は年金事務所に相談に行くと良いでしょう。オリックス生命のぴったり保険ナビもわかりやすくおすすめです。
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算期間)
<遺族厚生年金の手続き>
遺族厚生年金の請求はお住いの地域の年金事務所に対して行います。年金手帳や戸籍謄本、住民票の写し等必要となる書類が多くなりますので、事前に年金事務所に電話で確認するか厚生労働省のホームページをご確認ください。
遺族厚生年金は、死亡した日の翌日から5年間請求しない場合には受給することができません。お早めの手続きをするようにしてください。
2-3-3. 業務が原因の死亡の場合 給与2ヶ月分の葬祭料がもらえる
業務が原因の死亡の場合、お葬式を行なった遺族は埋葬料を受給することができます。
労災から遺族年金と遺族特別支給金とは別にさらに葬祭料が受給できるのです。非常に手厚いですね。
会社が社葬を行った場合には、会社に対して支給が行われます。
葬祭料の金額は、31万5,000円+給付基礎日額30日分です。この金額が給付基礎日額の60日分に満たない場合には60日分支給されます。
およそ給与2ヶ月分の葬祭料がもらえることになりますね。
<給付基礎日額とは>
給付基礎日額とは労災の遺族年金のところで簡単にご説明しましたが、賞与を含まない労働事故前3ヶ月間の給与をその日数で割った1日あたりの平均給与のことです。
<労災埋葬料の手続き>
労災保険の葬祭料の申請は、会社の所轄労働基準監督署に対して行います。亡くなった日の翌日から2年経過してしまいますと請求することができませんので遺族年金等の手続きと一緒に行うことをお勧めします。手続きの詳細は厚生労働省のホームページをご確認ください。
2-3-4. 業務外の死亡の場合には埋葬料5万円がもらえる
会社員や扶養されている家族が亡くなった場合には、健康保険から埋葬料(家族埋葬料)として5万円を受給することができます。
この制度も意外と知られていません。請求することができなければもらうことができません。
病気等の理由により会社を退職して健康保険から抜けた方が亡くなった場合であっても、以下のいずれかの要件を満たせば埋葬料5万円を受け取ることができます。
・健康保険を抜けてから3ヶ月以内に亡くなった場合
・退職後、傷病手当金や出産手当金の給付を受けている間に亡くなった場合
・上記手当金の給付を受け亡くなってから3ヶ月以内に亡くなった場合
<埋葬料の手続き>
埋葬料の申請は、ご加入の健康保険組合か協会けんぽの都道府県支部になります。申請期限はなくなった後2年間ですので早めに申請するようにしてください。
<国民健康保険にも同様の制度がある>
退職後に国民健康保険に加入した場合には、国民健康保険から同様の葬祭費を受給することができます。
国民健康保険はお住いの地域の役所が管轄ですので、それぞれの役所ごとに金額が異なりますが、おおむね3万円から7万円となっているようです。
国民健康保険の葬祭費について気になる方は、お住いの地域の役所にご確認ください。
2-4. 出産に関する社会保障
出産に関する社会保障は大きく2つです。
・出産一時金として42万円もらえる
・産休中は社会保険が免除になり、出産手当金がもらえる
独身男性であっても知っておいて損はありません!将来結婚して子供ができる時に備えて出産や育児に関する社会保障の内容を把握しておくと人生の選択肢が豊かになります。
『子育てに専念したい』と考えていたとしても、妊娠直後に退職するのか産休や育児休業を取得するのかで受けられるものが全然変わってきます。制度を後から知って後悔をしないようにしてください。
2-4-1. 出産一時金として42万円がもらえる
会社員や扶養となるご家族が出産した場合、出産一時金として健康保険から1児につき42万円を受給することができます。
すでにお子さんがいらっしゃる方はよくご存知のことと思います。
多くの場合には出産費用がそれ以上にかかってしまいますが、これから育児にかかる費用等を考えると出産時の42万円は助かりますよね。
<注意点>
出産一時金は無事に出産した場合だけではなく、妊娠4ヶ月(85日)以上での早産や死産、流産、人工妊娠中絶も支給対象として含まれます。
<出産一時金の手続き>
出産費用を支払ったのちに出産一時金をもらう方法だけでなく、健康保険から産婦人科への直接支払制度もありますので出産予定の医療機関が対応をしているか確認をしてみてください。
直接支払制度を利用の場合、出産一時金の手続きは出産予定の医療機関にて直接支払制度の合意書を作成することで終了します。
直接支払制度を利用しない場合、出産一時金の請求はご加入の健康保険組合や協会けんぽの都道府県支部に申請をすることになります。
2-4-2. 産休中は社会保険料が免除される
産前42日から産後56日のうち産休として仕事を休んだ期間については、健康保険料と厚生年金保険料は免除となっています。(双子等の場合には産前98日から)
対象となる産前産後期間中に給与があるか否かは問いません。有給を利用しているような場合で給与が出ていても社会保険料が免除となるのです。
社会保険料が免除になっても将来年金を受け取る際に不利益になることはありません。保険料を納めた期間として扱われるからです。
<社会保険料免除の手続き>
手続きは会社が行いますが、平成26年4月からの比較的新しい制度ですので会社にお任せでは安心できません。
小さな会社や産休の事例が少ない会社の場合には会社がそのまま手続きをしない恐れもあるからです。
産前産後休業中に申請を行わなければいけませんので、産休中も社会保険料を徴収されそうな状況でしたら会社に制度を説明してみてください。
会社が行う手続きは年金事務所になります。
2-4-3. 産休中は出産手当金がもらえる
会社員本人の産休中に給与が出ない場合には、健康保険から出産手当金を受け取ることができます。
出産手当金がもらえる期間は社会保険料が免除となる期間と同様です。原則として産前42日から産後56日までの期間です。
出産手当金の1日あたりの金額は、『支給開始日の以前12ヶ月間の標準報酬月額を平均した額』を30日で割った日額×2/3となります。
おおよそ給与の2/3がもらえるんだなとご理解いただければ十分です。『2-2-2. 仕事ができない場合には1年6ヶ月間は補償を受けられる』でご説明した傷病手当金と同様の金額です。
<注意点>
産休中に給与が出る場合であっても出産手当金の日額よりも少ない場合には、その差額を出産手当金として受け取ることができます。
あくまで産休中の手当てですので、就労した日については給与の額に関わらず出産手当金は受給することができませんのでご注意ください。
<出産手当金の手続き>
必要な手続きは通常は会社が行ってくれますが、ご自分で申請することも可能です。
出産手当金の申請はご加入の健康保険組合や協会けんぽの都道府県支部となります。産婦人科の医師と会社の証明が必要となります。出産手当金は休業した日から2年を経過しますと請求することができませんので忘れずに申請するようにしてください。
2-5. 育児に関する社会保障
育児に関する社会保障の内容は大きく以下の2つです。
・出生後中学生まで児童手当がもらえる
・育児休業中は社会保険が免除になり、育児休業給付金がもらえる
児童手当は小さな子供がいるうちは本当に助かります。育児休業を取る場合にも手厚い給付金がもらえますのでよく理解してくださいね。
2-5-1. 毎月1万5,000円!児童手当は育児の心強い味方
中学生までの児童を養育する者に対しては、住民登録をしている市区町村から児童手当を受けることができます。通常は父母のうち収入が多い方が受給者となります。
受給者の所得と児童の年齢や人数によって児童手当の金額は異なります。
所得制限未満の場合には3歳未満は毎月15,000円、3歳から小学生までは第1子、第2子までは毎月10,000円、第3子以降は毎月15,000円、中学生は毎月10,000円となっています。
前年の所得が所得制限以上の場合には、児童1人につき毎月5,000円となっています。
所得制限があるかないかで随分と違いますね。
<児童手当の所得制限>
児童手当の所得制限は受給する前年の所得が基礎となります。
所得額 − 控除額 − 8万円 = 所得制限限度と比較する所得
所得は会社員の方であれば源泉徴収票から確認することができます。『給与所得控除後の金額』という欄でご確認ください。
退職金をもらった場合の退職所得や、不動産を売却した場合の譲渡所得、先物取引にかかる雑所得等も所得額に含まれます。該当する所得がある方は確定申告をされていると思いますので、確定申告書の所得でご確認ください。
控除額は所得税法の所得控除のうち以下の所得控除のみを控除することができます。
・雑損控除
・医療費控除
・小規模企業共済等掛金控除
・障害者控除(一般障害者27万円 特別障害者40万円)
・寡婦(夫)控除(27万円 特別の寡婦35万円)
・勤労学生控除(27万円)
所得制限限度額は扶養している親族等の数によって以下のとおりとなります。前年の12月31日における扶養親族等が1人増えるごとに38万円を加算していきます。扶養親族等が5人以上いる場合も同様です。
扶養親族等の人数 | 所得制限限度額 | 限度額の計算式 |
0人 | 622万円 | 622万円+0円 |
1人 | 660万円 | 622万円+38万円×1人 |
2人 | 698万円 | 622万円+38万円×2人 |
3人 | 736万円 | 622万円+38万円×3人 |
4人 | 774万円 | 622万円+38万円×4人 |
扶養親族等については前年12月31日に扶養している配偶者や子供の人数によりますので、29年1月に第一子が生まれた方については扶養親族等の人数は0人として限度額を計算します。
所得税法上は16歳未満の子どもについては扶養親族として扱われませんが、児童手当の限度額計算上は扶養親族として扱います。
70歳以上の扶養親族等については、1人あたり44万円となります。
<児童手当の手続き>
児童手当の請求は住民登録のある役所になります。請求した日の翌月分からの支給となりますので、子供が産まれたらすぐに申請をするようにしてください。
申請後、毎年6月1日の状況を確認するための現況届が届きますので、必ず必要事項を記載して郵送にて送り返すようにしてください。児童手当がもらえなくなる恐れがあります。
なぜ現況届を出さなければいけないのでしょうか?
児童手当の受給対象となる父には内縁関係の父も含まれるため、役所の情報だけでは真の養育者を確定させることができないからです。提出をしないまま2年間経過してしまいますと児童手当の受給権がなくなってしまいます。万が一現況届の提出を忘れてしまったらすぐに役所で必要手続きをとるようにしてください。
2-5-2. 育児休業中には社会保険料が免除される
産休中と同様に育児休業を取得して休業している間の社会保険料も免除されます。社会保険の負担が免除されたからといって将来もらえる年金額に影響はありません。
会社によって育児休業を取得できる期間は異なると思いますが、社会保険料が免除となるのは子供が3歳になるまでの間です。
育児休業前の給与によって社会保険料の負担は変わってきますのでいくら免除されるとは簡単には言えませんが、国民年金の1ヶ月あたりの保険料は16,490円(平成29年度)ですので、3年間でおよそ60万円ほどの保険料の負担が免除されると考えると大きいですよね。所得が高かった方についてはさらに免除される保険料は多くなります。
<社会保険料免除の手続き>
手続きは会社が行いますが、3年間の育児休業を取得する場合には3度の手続きをする必要があることを知っておいてください。
制度上は育児休業を3つに分けて考えているようなのです。
・1歳に満たない子を療養するための育児休業
・1歳から1歳6ヶ月に達するまでの子を療養するための育児休業
・1歳6ヶ月から3歳に達するまでの子を療養するための育児休業
それぞれの育児休業を取るごとに会社は手続きをすることになりますので、3度の手続きが必要となるわけです。
社会保険料の免除手続きは会社がそれぞれ上記の育児休業中に年金事務所に対して行います。
2-5-3. 育児休業中には育児休業給付金がもらえる
育児休業を取得して休業している場合には雇用保険から育児休業給付金を受け取ることができます。
<注意点>
雇用保険は労災と同様に労働者を保障するためのものですので、会社役員は対象とはなりません。
また、パートタイマーの場合には1ヶ月以上働き続ける見込みであることと週の労働時間が20時間以上の場合には雇用保険の被保険者となり制度を利用することができます。条件を満たす方で給与から雇用保険料が引かれていない方は会社に確認してみてください。
育児休業給付金を受給するためには以下の要件を満たす必要があります。
- 休業前の2年間のうち、月に11日以上仕事した月が12ヶ月以上あること
- 休業している月の給与が休業前の給与の8割以上支払われていないこと
- 休業している月に仕事をしている期間が10日(80時間)以下であること
育児休業給付金は原則として子供が1歳になる前日までの期間、一月毎に以下の金額を受給することができます。
6ヶ月まで 賃金日額×支給日数×67%(上限299,691円)
6ヶ月後 賃金日額×支給日数×50%(上限223,650円)
支給日数原則として30日です。終了月は子供が1歳になる前日までの日数となります。
<賃金日額とは>
休業前6ヶ月間の給与の合計を180日で割った1日あたりの給与
仕事をしている日数が10日以内であればその日数にも給付金がもらえるなんて大盤振る舞いですね。同じ休業給付である育児休業給付金にはない特徴です。管轄が健康保険ではなく雇用保険だからでしょうか。
<やむを得ない場合は延長も>
子供が1歳を超えた場合であっても、保育園待機待ち等のやむを得ない事情がある場合には、子供が1歳6ヶ月に達する前日まで育児休業給付金を延長して受け取ることができます。保育園の申し込みをしていない場合には延長事由に該当しませんので注意してください。
<育児休業給付金の手続き>
育児休業給付金の申請は会社が所轄のハローワークに対して行います。自分で行うことも可能です。ハローワークのホームページをご確認ください。
2-6. 失業をした場合の社会保障
2-6-1. 失業後求職している場合には失業保険がもらえる
会社を辞めて次の仕事を探すまでの間、失業保険がもらえることは皆さんご存知のことと思います。
失業保険は以下の要件を満たした場合に受け取ることができます。要件もしっかりご確認ください。
・雇用保険の被保険者であったこと
・失業後に就職活動をしていること
・会社を辞めた日以前2年間で1ヶ月に11日以上出勤している月が12ヶ月以上あること
会社員として1年以上働いていた方であれば就職活動をしていれば大丈夫だということになります。
<注意点>
会社役員の方は雇用保険の被保険者とはなりませんので、失業保険をもらうことはできません。
失業保険の金額は会社を辞めた理由、直前6ヶ月間の給与、雇用保険の被保険者であった期間の3つによって決まります。
受給できる総額は以下のとおりです。
基本手当日額×給付日数
自己都合退職の場合の給付日数は、雇用保険被保険者であった期間により以下の通りとなります。
被保険者の期間 | 1年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
給付日数 | 90日 | 120日 | 150日 |
会社都合の退職の場合や介護や障害のために退職をしたような場合には受給日数が増えることになります。詳しくはハローワークのホームページをご確認ください。
会社を退職するタイミングも重要ですね。雇用保険被保険者の期間が少し違っただけで受給日数が30日も変わってしまうことがあるからです。
<基本手当日額とは>
基本手当日額は、退職前の6ヶ月間の月給をもとにした賃金日額と年齢をもとに計算されます。
30歳から44歳までの方の場合、税引前の月給と基本手当日額の目安は以下のとおりです。(平成29年8月1日時点)
月給(税引前) | 基本手当日額 |
20万円 | 4,853円 |
25万円 | 5,488円 |
30万円 | 5,891円 |
35万円 | 6,063円 |
40万円 | 6,666円 |
447,300円以上 | 7,455円 |
基本手当日額の計算は非常に複雑となっており計算方法も変更されますので、詳しく知りたい方は厚生労働省のホームページでご確認ください。
基本手当日額の上限額は以下のとおりとなります。(平成29年8月1日時点)
年齢 | 上限額 |
30歳未満 | 6,710円 |
30歳以上45歳未満 | 7,455円 |
45歳以上60歳未満 | 8,205円 |
60歳以上65歳未満 | 7,042円 |
<手続き>
失業保険の請求は退職後にハローワークで行います。
退職後1年経ってしまいますと失業保険を受給することができませんので退職後すぐに手続きをとるようにしてください。
辞めた後に会社から『雇用保険被保険者離職票』をもらった後、まずは記載されている内容が間違えていないか確認してください。
離職理由が異なると受給できる金額にも大きく影響します。会社都合の退職にもかかわらず自己都合退職となっているような場合にはハローワークに手続きをする際に申告するようにしてください。
手続きには身分証や写真、印鑑、通帳、マイナンバーがわかる資料が必要となります。事前に確認をしてからハローワークに行くと手続きがスムーズです。
ハローワークインターネットサービス 雇用保険の具体的な手続き
<注意点>
失業保険はすぐにもらうことができませんので注意してください。ハローワークで初回の手続きをした後7日間は待期期間となります。自己都合退職の場合にはそれからさらに3ヶ月間の給付制限があります。この間基本手当は支給されません。
自己都合退職の場合、なかなか失業保険をもらうのも難しいですね。
ところが、自己都合退職の場合であっても3ヶ月の給付制限を待たずに失業保険をもらう方法があるのです!
それが職業訓練校での技能取得です。詳しくは『2-6-2. 失業中のスキルアップで技能取得手当+失業給付期間の延長』でご説明いたします。
2-6-2. 失業中のスキルアップで技能習得手当+失業給付期間の延長
退職後に次の就職先がすぐに決まるのが最もいいことだと思いますが、退職した年齢によってはなかなか簡単には決まらないことも多いものです。
そんな時には職業訓練校での技能取得でスキルアップを図りましょう。
ハローワークを通じて職業訓練校で技能取得をする場合、以下のようなメリットがあります。
- 一般的に職業訓練の受講料は無料のことが多い
- 雇用保険から技能取得手当がもらえる
- 自己都合退職であっても3ヶ月の給付制限が解除され失業保険を受けることができる
- 失業保険の給付日数を過ぎても訓練中は失業保険をもらえる(2年間まで)
お金をもらえてスキルアップできるなんていいことづくしですよね。
特に自己都合退職の場合、3ヶ月間待たなくても失業保険をもらえるという点はメリットが大きいと思います。
雇用する側は履歴書の職歴の空白期間が気になるものです。2年間も職業訓練していたらなかなか次の勤め先が見つからなくなる恐れがありますので注意してくださいね。
技能取得手当は受講手当と通所手当とに分かれています。
受講当は日額500円で上限は月額2万円です。
通所手当は実費交通費ですね。上限は月額42,500円です。
<技能取得手当の手続き>
手続きはハローワークで行うことになります。失業保険の手続きを最初にする時によく説明を聞くようにしてください。
2-6-3. 早期の就職先決定で就職促進給付がもらえる
早期に再就職ができた場合、雇用保険から就職促進給付がもらえます。就職のお祝い金のようですね。
就業促進給付は再就職先の状況等によって以下の3つがあります。
- 安定した職業に就いた場合の『再就職手当』
- 再就職をした会社の給与が前職の給与より低い場合の『就業促進手当』
- 常用雇用以外の仕事に就いた場合の『就業手当』
現時点で仕事をされている方は、このような制度があるんだなと知っておいていただければ結構です。
ここでは再就職手当についてさらに詳細をご説明いたします。
再就職をした時点で失業保険の給付残日数が1/3以上あり、再就職をした会社で雇用保険の被保険者になるような場合が対象となります。安定した職業への再就職を促すため、短期間のバイトでは対象になりません。
自らが事業主となって雇用保険の被保険者を雇用する場合にも対象となります。
会社都合による退職等で3ヶ月の給付制限がない方の場合と自己都合退職で3ヶ月の給付制限がある方で給付の条件が少し変わります。
<注意点>
3ヶ月の給付制限がない方の場合、どのようなルートで次の就職先が決まったとしても再就職手当を受けることができるのですが、給付制限がある自己都合退職の方の場合、7日間の待期後1ヶ月間はハローワークで紹介された会社に再就職した場合に限り再就職手当を受けることができるのです。それ以降は知人の紹介や新聞広告等で次の就職先が決まった場合であっても再就職手当を受けることができます。
退職した会社やその関係会社に再就職する場合やハローワークでの求職手続きをする前から再就職が決まっていたような場合、3年以内に一度再就職手当を受け取っていたような場合には受給をすることができません。その他細かい条件がありますので、ハローワークで確認するようにしてください。
再就職手当の金額は、支給残日数が1/3以上残っているか、2/3以上残っているかで異なります。
支給残日数1/3以上の場合 支給残日数×70%×基本手当日額
支給残日数2/3以上の場合 支給残日数×60%×基本手当日額
もらうことができた失業保険の60%くらいもらえるんだなと思っていただければ結構です。再就職手当計算上の基本手当日額には上限が設けられています。60歳未満の方の上限は6,070円です。(29年8月1日時点)
<就業促進給付の手続き>
就業促進手当の手続きはハローワークで行います。会社退職後に失業保険の給付手続きをしていないと受給できません。詳しくはハローワークにてご確認ください。
2-6-4. 求職中にけがや病気をしてしまい求職できなくなった場合
求職中に15日以上30日未満の期間ケガや病気で再就職活動ができなくなってしまった場合には、雇用保険から失業保険の代わりに傷病手当を受けることができます。
15日未満のケガや病気でしたらそのまま失業保険をもらうことになりますので、それほど利用する機会はないことと思います。
傷病手当の金額は失業保険の金額と同様です。
ケガや病気で就職活動できない間に失業保険をもらえる日数が減っていってしまいますので、失業保険の代わりですね。受給して特になるということはありません。
<注意点>
30日以上就職活動ができない場合には、失業保険も傷病手当ももらえません。
ケガや病気、出産育児などで今すぐに仕事をつけない場合には、失業保険の受給期間の延長をすることができます。
もらう時期を後にずらすというイメージですね。
失業保険は原則として退職後1年経つともらえなくなってしまうのですが、受給期間を3年まで延長することができます。もともとの1年とあわせて4年まで延長できるのです。
<傷病手当の手続き>
手続きはハローワークになります。ケガや病気等で30日以上仕事がつくことができなくなった日の翌日以降、早期の申請をすることが原則です。
2-7. スキルアップには教育訓練給付金がもらえる
雇用保険は失業中でなくても利用できるのです。会社員がスキルアップ等の目的でパソコン教室や資格取得の専門学校に通う場合や、夜間大学や夜間の大学院で学ぶ場合、雇用保険から教育訓練給付金をもらうことができます。
教育訓練給付金は、一般教育訓練給付金と専門実践教育訓練給付金とに分かれます。
一般教育訓練給付金の講座は情報処理技術者試験、簿記検定、TOEIC、司法試験を始めかなり幅広い範囲となっています。
専門実践教育訓練給付金の講座は看護師やMBA、法科大学院のように数年にわたるものが多くなっています。
スキルアップに興味のある方は、どのような講座が教育訓練給付金の対象となるのかぜひ確認してみてください。
教育訓練給付金の受給対象者の条件と受給金額は以下の通りです。
給付金の種類 | 一般教育訓練給付金 | 専門実践教育訓練給付金 |
主な条件 |
雇用保険の被保険者期間3年以上 前回の教育訓練給付から3年以上経過 |
雇用保険の被保険者期間10年以上 前回の教育訓練給付から10年以上経過 |
給付金の金額 |
教育訓練費の20% |
教育訓練費の40% |
一度会社を辞めて雇用保険の被保険者でなくなった方であっても、受講開始までの期間が1年以内であれば大丈夫です。
専門実践教育訓練給付金の場合、講座で定められた資格等を取得し受講終了日の翌日から1年以内に雇用保険の被保険者となっている場合には、なんと追加で教育訓練費の20%相当を追加で受けることができるのです。あわせて60%ですので非常にありがたいですね。合計の上限額は1年で48万円となります。受講期間の最長は3年ですので最長で144万円が支給されることになります。
<手続き>
一般教育訓練給付金の手続きは、受講後に住所地を所轄するハローワークに申請をすることになっています。退職後で支給要件に該当するか不安な方は事前にハローワークで確認をすると安心です。
受給要件を満たしている方であれば必要な事務手続きは給付金の対象講座や学校で詳しく教えてもらえますので、確認をしてから受講を始めるようにしてください。
専門実践教育訓練給付金については、受講前にハローワークでの手続きが必要となります。受講前の手続きは講座受講開始日の1ヶ月前までに行う必要がありますので、余裕をもって準備するようにしてください。
2-8. 介護に関する社会保障
介護に関する社会保障は介護を受ける方向けと介護休業を取る方向けの大きく2つに分かれます。
会社員の社会保障についてご説明しておりますので、この記事をお読みの方で今すぐ介護が必要となる方は少ないと思います。
介護休業を取る方向けの制度を中心にご説明いたします。
2-8-1. 介護休業の場合には介護休業給付金をもらえる
親の介護によって仕事を休まなくてはいけないような場合、雇用保険から介護休業給付金を受けることができます。
介護休業給付金を受給するためには以下の要件を満たす必要があります。
- 休業前の2年間のうち、月に11日以上仕事した月が12ヶ月以上あること
- 休業している月の給与が休業前の給与の8割以上支払われていないこと
- 休業している月に仕事をしている期間が10日(80時間)以下であること
雇用保険の休業給付ですので、育児休業給付金『2-5-3. 育児休業中には育児休業給付金がもらえる』と同じ要件になっています。
介護休業給付金は、対象となる家族の同一要介護につき1回の介護休業期間に限り支給されます。休業開始日から最長3ヶ月間です。介護休業中1ヶ月ごとに以下の金額となります。
賃金日額×支給日数×67%(上限329,841円)
支給日数は原則として30日になります。休業終了月や休業から3ヶ月目については支給対象日までの日数です。
<賃金日額とは>
休業前6ヶ月間の給与の合計を180日で割った1日あたりの給与
<注意点>
一度介護休業給付金の対象となった家族であっても、要介護状態が悪化して再度育児休業を取得した場合には介護休業給付金の対象となります。ただし、同じ家族については通算で93日の受給が限度となります。
産休中と育児休業中には社会保険料の免除がありましたが、介護休業給中の社会保険料は免除されません。
<手続き>
介護休業給付金の手続きは会社が行います。給付金の申請手続きは自分で行うことも可能ですが、介護休業を開始した際の手続きは会社しか行えませんので、全て会社に手続きをお願いした方が手続きがスムーズかと思います。
介護休業給付金の手続きは会社の所轄するハローワークに提出を行う必要があります。
2-8-2. 介護保険で介護サービス負担が1割から2割に
ご家族が寝たきりや認知症等で常時介護が必要となった場合、介護サービスを受けることになります。
介護保険を利用することで介護サービスの自己負担が1割か2割までに抑えることができるのです。
介護保険の被保険者は40歳以上の方となります。40歳になると給与から介護保険料を引かれるようになるのです。
65歳になると介護保険証が交付されますが、40歳から64歳までの方も被保険者ですので必要な場合には介護保険の保障を受けることができます。
<手続き>
介護保険の利用にあたっては、お住いの市区町村で介護認定を受ける必要がありますので、詳しくはお住いのお役所に確認をしてみてください。
2-8-3. 月額限度を超えた介護サービス費用は戻ってくる
月額の介護サービス費用の自己負担には上限があります。上限を超えた金額を支出した場合、介護保険から高額介護サービス費用として超えた金額が戻ってくることになります。健康保険を利用した医療費と同様ですね。
1ヶ月の介護サービス費用の自己負担上限は以下のとおりです。(平成29年8月1日時点)
対象となる方 | 月額自己負担の上限 |
世帯の誰かが住民税を課税されている方 | 44,400円(世帯) |
世帯の全員が住民税を課税されていない方 | 24,600円(世帯) |
前年の所得と年金収入合計80万円以下の方 | 24,600円(世帯) 15,000円(個人) |
生活保護を受給している方 | 15,000円(個人) |
<手続き>
月額の上限を超えた方にはお住いの市区町村から申請書が届きますので、必要事項を記載して送り返すようにしてください。介護サービスの利用から3ヶ月以上経ってから連絡がくることが多いようです。
詳しくはお住いのお役所で確認してください。
2-9. 障害状態となった場合の社会保障
障害状態となった場合には障害年金を受けることができます。
障害の原因が通勤中や業務上の原因によるものであれば労災保険の障害年金を受給することができます。会社員の場合、厚生年金からも障害年金を受けることができます。両制度は全く別の制度ですので一つずつご説明いたします。
2-9-1. 業務が原因で障害となった場合は労災の障害年金で手厚く保障
通勤中のケガや業務が原因となった病気がもとで障害が残ってしまった場合には、障害の状況によって障害給付(年金あるいは一時金)を労災保険から受けることができます。
障害給付に加えさらに障害の状況に応じて障害特別支給金という一時金を受けることができるのです。『2-3-1. 通勤中や業務中のケガや病気が原因でなくなった場合の遺族年金』で確認した労災遺族が受ける遺族年金と同様ですね。
障害給付の金額は障害の等級によって以下のとおりです。
障害等級 | 受給形態 | 障害給付 |
1級 | 年金 | 基礎日額の313日分 |
2級 | 年金 | 基礎日額の277日分 |
3級 | 年金 | 基礎日額の245日分 |
4級 | 年金 | 基礎日額の213日分 |
5級 | 年金 | 基礎日額の184日分 |
6級 | 年金 | 基礎日額の156日分 |
7級 | 年金 | 基礎日額の131日分 |
8級 | 一時金 | 基礎日額の503日分 |
9級 | 一時金 | 基礎日額の391日分 |
10級 | 一時金 | 基礎日額の302日分 |
11級 | 一時金 | 基礎日額の223日分 |
12級 | 一時金 | 基礎日額の156日分 |
13級 | 一時金 | 基礎日額の101日分 |
14級 | 一時金 | 基礎日額の56日分 |
基礎日額とは、労災の遺族年金でご説明した内容と同様です。月給だけでなくボーナスも支給対象となります。
障害の等級については厚生労働省のホームページをご確認ください。
障害給付に加えてもらえる障害特別支給金は障害の等級によって以下のとおりです。
障害等級 | 受給形態 | 障害給付 |
1級 | 一時金 | 342万円 |
2級 | 一時金 | 320万円 |
3級 | 一時金 | 300万円 |
4級 | 一時金 | 264万円 |
5級 | 一時金 | 225万円 |
6級 | 一時金 | 192万円 |
7級 | 一時金 | 159万円 |
8級 | 一時金 | 65万円 |
9級 | 一時金 | 50万円 |
10級 | 一時金 | 39万円 |
11級 | 一時金 | 29万円 |
12級 | 一時金 | 20万円 |
13級 | 一時金 | 14万円 |
14級 | 一時金 | 8万円 |
<注意点>
業務上の原因で障害となってしまった場合で受給の要件を満たせば、労災の障害年金と障害厚生年金さらに障害基礎年金の3つを受け取ることができます。ただし、元の給与を超えないよう労災の障害年金の受給額に一定の調整を行うことになっています。詳しくは厚生労働省のホームページをご確認ください。
<労災の障害給付等の手続き>
労災による障害給付と障害特別支給金の申請は労働基準監督署で行います。事業主や医師の証明が必要となります。詳しくは厚生労働省のホームページをご確認ください。
どちらも障害が残ってしまったのち5年請求をしないと請求することができませんので注意してください。
2-9-2. 障害が残った場合 障害厚生年金がもらえる
厚生年金の被保険者の障害が残ってしまった場合、厚生年金から障害基礎年金、障害厚生年金をもらうことができます。
障害年金も通常の年金と同様に2階建の制度となっています。会社員の場合には障害年金受給の要件に該当すれば障害基礎年金と障害厚生年金の両方をもらうことができるのです。
障害基礎年金には1級と2級しかありませんが、障害厚生年金には3級や障害手当金という一時金もあるのです。障害基礎年金と比べてより広い範囲を保障してくれていることになるのです。
障害基礎年金と障害厚生年金の受給金額は以下のとおりです。
障害等級 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金/障害手当金 |
1級 | 975,100円+子の加算 | 報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加算 |
2級 | 780,100円+子の加算 | 報酬比例の年金額+配偶者の加算 |
3級 | なし | 報酬比例の年金額(最低585,100円) |
障害手当金 | なし | 報酬比例の年金額×2(最低1,170,200円) |
障害基礎年金では、『子』がいる場合に子の加算を受けることができます。
『子』とは遺族年金と同様です。18歳になった後の3月31日までの子供か20歳未満で障害1級2級の子供がいる場合にその数によって年金額が加算されます。
第1子、第2子はそれぞれ224,300円、第3子以降は74,800円です。
障害厚生年金の配偶者の加算は、224,300円です。
障害等級については日本年金機構のホームページをご確認ください。
<注意点>
障害というと精神障害や身体障害をイメージされる方が多いと思いますが、障害年金の対象となる『障害』の範囲は非常に広いのです。治療を受けてもこれ以上症状が改善しない場合を『障害』と定義しているからです。
ガンや糖尿病、心疾患、うつ病などで長期療養が必要となる場合にも障害年金の対象となるのです。
このことはよく覚えておいてください。詳しくは日本年金機構のホームページをご確認ください。
障害基礎年金しか受給できないか、障害厚生年金も受給できるかは、障害の基礎となった初診日時点において厚生年金に加入していたか否かで判断することになります。
たとえば体調に異変を感じて会社を退職後に病院に通った場合には障害基礎年金しかもらえません。
仕事を休んで病院に行くのは大変ですが、会社員である期間中にぜひ病院に行くようにしてください。
<障害厚生年金の手続き>
障害厚生年金の申請は年金事務所に行います。医師の診断書や必要書類が非常に多くなっています。申請しても認定が出ないこともあります。障害年金がもらえるかもらえないかでは今後の生活に大きく影響しますので、ご心配な方は経験豊富な社会保険労務士に相談をすることをお勧めします。
2-10. 60歳定年後の社会保障
まだまだみなさんは老後のことは先だと思っているのではないでしょうか。私もそのように思っています。
はたして自分が年金をもらうのは何歳からになるのでしょうか?これだけ手厚い社会保障をいつまで維持し続けることができるのでしょうか。
将来どうなるのかはわかりませんが、定年後の社会保障について現時点の制度を簡単に理解しておいてください。
定年後の社会保障は大きく分けると2つです。働くシニアをサポートする再雇用や再就職の支援と、みなさんよくご存知の厚生年金です。
2-10-1. 再雇用で給与が減った場合には補助が出る
厚生年金がもらえるのが65歳以上となっていますが、多くの会社では60歳を定年としています。年金をもらうまでの5年間を同じ会社で再雇用として働くことが多いのではないでしょうか。
多くの場合、再雇用になると給与が下がることになります。こんな場合には高年齢雇用継続給付金を受けることができます。
受給には以下のような要件が必要となります。
・雇用保険の被保険者期間が5年以上あること
・60歳時点の給与より75%未満に減少していること
<別の会社に再就職の場合>
60歳以降に別の会社に再就職をした場合にも同様の給付金を受けることができます。高年齢再就職給付金と言います。高年齢雇用継続給付金の条件に加えて、再就職の時点の失業保険の給付残日数100日以上あることが求められます。
<手続き>
高年齢雇用継続給付金も高年齢再就職給付金もハローワークでの手続きとなります。会社が手続きを行ってくれる場合もありますのでまずは会社に問い合わせてみるのがいいでしょう。
2-10-2. 厚生年金を受給できるのは65歳から
会社員として厚生年金保険料を負担してきた方は、65歳から厚生年金の受給を受けることができます。
<手続き>
厚生年金の申請は年金事務所で行います。みなさんが年金をもらうのはまだまだ先のことともいますが、自動的に年金がもらえるわけではないので注意してくださいね。詳しい手続きは日本年金機構のホームページをご確認ください。
毎年誕生月には日本年金機構からねんきん定期便が届きます。普通の会社員であればほとんど問題ないと思いますが、小さな会社等できちんと保険料を支払っているか不安な場合には厚生年金保険料が支払われているか確認すると良いでしょう。
ご自分の年金を確認したい場合には、日本年金機構が提供するねんきんネットを利用してください。
3. 社会保障でカバーできないリスクと対処法
日本の社会保障についてご確認頂きましたがいかがでしたでしょうか。結構広い範囲で幅広く保障されていると感じた方が多いのではないでしょうか。
みなさんが万が一会社員を辞めた場合であっても、国民年金の支払いはきちんと続けるようにしてくださいね。会社員の社会保障を対象にご説明してきましたのであえてご説明してきませんでしたが、遺族年金や障害年金などは年金の保険料を支払いをしていない方は原則もらうことができないからです。
非常に手厚い日本の社会保障ですが、国民の最低限度の生活を保障するためのものですので過度な期待はできません。いざそのような状況になった時に今と同じ生活を送ることができるかといえば決してそうではないと感じています。子供をそれぞれ大学まで行かせるための教育費などはとても社会保障ではカバーしきれません。
また、家事や地震、事故を起こした際の賠償も社会保障で手当てされるものではありません。必要に応じて自分で備えるようにしてください。
3-1. 災害・トラブルのリスクには損害保険で備える
持ち家の方は火事や地震等に備えて火災保険と地震保険に加入をしてください。災害の際に家がなくなってしまっても住宅ローンは残ってしまいます。家賃を支払いながら住宅ローンも返済していくのは厳しいですよね。
自動車を運転される方は自動車保険に加入していることと思います。自動車事故を起こしてしまった場合の損害賠償は高額になりがちですのでしっかりと保険でカバーしてください。
火災保険や自動車保険を加入している方にぜひ特約でつけていただきたいのが個人賠償責任特約です。家族が自転車事故を起こしてしまったような場合の高額な損害賠償もまかなうことができます。
小学校5年生の子供が起こした自転車事故で、親に9,520万円もの損害賠償の支払いを命じた裁判例をご存知の方も多いと思います。とても支払いきれませんよね。
ご加入の保険会社によって異なると思いますが年間2,000円もあれば個人賠償責任特約をつけられるのではないでしょうか。長期契約の方が保険料が割安になる傾向があります。火災保険のように本体の保険が長い場合には長期契約も検討してみてください。
火災保険や自動車保険に加入していない方でも、子供が大きくなってきたら個人賠償保険の加入を検討してみてください。保険会社によって異なると思いますが、賠償保険は通常家族全員を被保険者とすることができます。賠償額1億円の保険料は4,000円程度です。
3-2. 死亡の場合の教育資金は定期保険で備える
死亡の場合の教育資金は定期保険で備えましょう。定期保険とは死亡の場合の保険金額が一定で保険期間が10年、20年というような有期の保険です。
万が一の際であってもきちんと子供の教育費は払ってあげたいですよね。『奨学金』という名の借金を背負った新社会人には経済的な苦労が多いようです。
幼稚園から大学までの教育費は最低でも838万円、私立の場合には2,000万円以上になることもあります。子供1人当たりの学資として2,000万円の掛捨保険があると安心ですね。
保険には目的によって名前をつけて管理することをお勧めします。『万が一自分が死んだ場合の太郎の教育費用の保険』というような名前をつけておくと良いでしょう。
掛捨保険ではオリックス生命のインターネット申込専用の掛捨保険Bridgeとライフネット生命の定期死亡保険(無配当・無解約返戻金型)が保険料が安くお勧めです。インターネット場で今すぐ保険料の試算ができるのであれこれシミュレーションできるので非常に便利です。
30歳の男性の方で保険金2,000万円、保険期間20年であれば保険料は3,000円ほどです。(2017年8月執筆時点)
保険期間20年ですので大学卒業までに不安な場合には残りの年数のみ更新するという方法も可能です。生まれたばかりのお子さんの学資に備える場合、保険期間は10年ではなく20年としておくとよいでしょう。10年後に更新するよりも最初から20年にしていた方が保険料が安くなるからです。
3-3. 死亡の場合の家族の生活費は収入保障保険で備える
教育費以外に残された家族が生活をするのにいくらかかるでしょうか。実際に試算してみると良いと思います。共働きかどうかによっても大きく異なりますね。自宅を持ち家にしているか賃貸かでも大きく異なるでしょう。持ち家の方で住宅ローンに団体信用生命保険が設定されている場合、住宅ローンを残された家族が負担する必要がないからです。
2人以上の世帯の平均消費支出はおよそ28万円です。遺族年金で11万円、配偶者がパートなどで月に6万円ほど働けるとすると月額不足となる生活費は10万円です。
このようなリスクには収入保障保険がお勧めです。亡くなった場合や高度障害になってしまった場合に毎月10万円ずつもらえるような保険があるのです。
収入保障保険は年金タイプの保険ですので、保険加入直後には保険料の総受取額が大きく保険期間が経過するにつれて受け取る保険金の総額は減っていくことになります。必要資金に合わせた保険金とすることで保険料を低く抑えることができるのです。
収入保障保険ではアクサダイレクト生命の収入保証2がお勧めです。
30歳の方の場合、亡くなった際に65歳まで毎月10万円もらえる保険の保険料は3,640円です。(2017年8月執筆時点)
3-4. 病気やケガで就労不能となった場合の生活費や学資は就業不能保険で備える
病気やケガで働けなくなってしまった場合の準備は念には念を入れた方が良いでしょう。亡くなってしまった場合には死亡保険などで備えができるのですが、病気やケガで仕事ができなくなるような場合には専用の保険をかけておかなければ備えをすることができないからです。
これまでご説明してきた通り、病気や怪我で働けなくなってしまった場合には1年6ヶ月までは傷病手当金を受け取ることができますし、病気やケガで障害を持つこととなってしまった場合には障害年金を受け取ることができます。
しかし病気やケガで仕事ができなくなった場合には死亡した場合と比べて多額の生活費が必要となるのです。本人の生活費や治療費、住宅ローンなどの負担が家族の生活費とは別に重くのしかかります。
自分の介護をするために配偶者が仕事を辞めざるを得ない状況に追い込まれてしまうこともあるでしょう。社会保障だけでは家族全員が最低限の生活を送ることはかなり難しいのです。とても子供の学資には手が回らないことは容易に想像ができます。
病気やケガで就労不能となってしまった場合に備えるには、ライフネット生命の就業不能保険がお勧めです。
30歳の方が就労不能となった場合に備えて毎月30万円を65歳まで受け取るような就業不能保険の保険料は4,442円からとなっています。(2017年8月執筆時点、受取条件によって保険料の差異あり)
3-5. 医療費が不安な方は医療保険の検討も
個人的な意見ですが、医療保険は必要性が薄いと考えています。健康保険が使える通常の医療については窓口の3割負担や高額療養費等で医療費負担のリスクはおおよそまかなえていると思いますし、医療費は高齢になれば誰にでも負担するべき老後の費用ですので貯蓄や長期投資で備えるべきだと考えるからです。
とはいえ若くしてガンになってしまう場合も珍しくはありません。医療費の負担が不安な方は医療保険の検討をしてみてください。
先進医療の治療費を補填することができるのは医療保険の良い点ですよね。必要性が薄いと自分で言っておきながら我が家では妻の医療保険にはしっかりと加入しています。
満足な治療も受けさせられずに恨まれるのも怖いので…。おかげさまで今のところ毎月保険料を支払っているだけです。
自分については先進医療を受けられるほどのお金がないのであれば、それは身分不相応ってことで仕方がないのだと思うことにしています。
医療保険はオリックス生命の新CUREが良いのではないでしょうか。先進医療が2,000万円まで保障されます。
4. まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございました。
日本では幅広く社会保障制度が整っていますが、制度があることを知って申請をしなければ受けることはできません。ご自身だけでなくご家族とも社会保障制度の概要を共有しておいてください。
ケガや病気の治療も障害の場合も死亡の場合も、その原因が業務に関するものか否かが非常に重要だという点もご理解いただけたこと思います。業務上のケガや業務が原因となった病気はしっかりと労災保険を使うようにしてください。労災のことを知らずに健康保険を使ってしまいますとその後に受ける障害年金や遺族年金にも大きく影響することとなります。
会社員の方の社会保障をテーマにご紹介してきました。労災保険や雇用保険で手当てされる各種社会保障は会社役員には適用されません。今は会社役員でない方も将来出世した場合に備えて知っておいてくださいね。
会社を辞める予定のある方も社会保障制度をよく確認してから判断するようにしてください。産休や育児休業が取得できれば社会保険料は免除されますし仕事をしていないくても各種手当を受けることができるからです。また、会社員のうちに雇用保険の教育訓練給付金を活用してスキルアップを図るのもいいでしょう。
会社員の厚生年金は自営業の方の国民年金と比べて充実しています。体調が悪く会社を辞めようと思っている方はぜひ会社員のうちに病院の診察を受けるようにしてください。会社員の時に初診を受けていれば障害厚生年金や遺族厚生年金を受け取ることができる可能性が出てくるからです。
社会保障はあくまでも最低限度の生活を送るための保障です。万が一の際にも今と同じ生活を送るためには、不足する教育費や生活費等は保険を活用して自分で備える必要があります。火災保険や地震保険も忘れずに加入してください。
社会保障制度をしっかりと把握した上で、万が一の場合の備えについてご家族と話し合ってください。
大切な家族のために!