住宅取得資金贈与を使って土地の購入はできるのだろうか?
戸建住宅を購入しようとする際、気になるのは土地の値段ですよね。住みたい地域は土地が高い!
住宅取得資金の贈与を使って土地の購入をすることは可能です。ただし、無条件で土地購入に充てられるわけではないので注意が必要です。
そこで今回は、住宅取得資金贈与を使って土地を取得するための条件と注意点をご紹介します。
自宅購入は人生の重大イベントです。贈与税非課税が使えないということがないよう、しっかりと確認をするようにしてください。
目次
1.住宅取得資金贈与で土地購入は可能
1-1.住宅とともにする敷地の購入はOK
住宅取得資金贈与で土地の購入は可能です。
『住宅を取得する資金の贈与なので、土地は無理なのでは?』と思われている方もご安心ください。
住宅と共にする敷地の購入であれば、住宅取得資金贈与を問題なく使うことが可能です。
法律では、住宅取得資金贈与で土地取得ができる場合を以下のように定めています。
- 住宅の新築、新築建売住宅の取得とともにする土地等の取得(住宅用家屋の新築に先行してする土地等の取得含む)
- 中古住宅の取得とともにする土地等の取得
- 今住んでいる住宅の増改築等と共にする土地等の取得
住宅の新築に先行する土地等の取得でも大丈夫です。いわゆる先行取得ですね。土地がない場合には先に土地を買わなければ建物の建築ができません。
贈与された住宅取得資金の全額を土地の購入対価に充てるのもOKです。建物は自己資金あるいはローンで購入することになります。
土地だけでなく土地を利用する権利(地上権や賃借権などの借地権)の取得でも大丈夫です。
本当??根拠は?と心配性の方は、以下の条文でご確認ください。
租税特別措置法(直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税)第七十条の二 平成二十七年一月一日から平成三十三年十二月三十一日までの間(第九項、第十一項及び第十二項において「適用期間」という。)にその直系尊属からの贈与により住宅取得等資金の取得をした特定受贈者が、次に掲げる場合に該当するときは、当該贈与により取得をした住宅取得等資金のうち住宅資金非課税限度額(既にこの項の規定の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかつた金額がある場合には、当該算入しなかつた金額を控除した残額)までの金額又は特別住宅資金非課税限度額(既にこの項の規定の適用を受けて贈与税の課税価格に算入しなかつた金額がある場合(平成三十一年三月三十一日までに次項第六号に規定する住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等に係る契約を締結してこの項の規定の適用を受けた場合を除く。)には、当該算入しなかつた金額を控除した残額)までの金額(平成三十一年四月一日以後に住宅用の家屋の新築、取得又は増改築等に係る契約を締結してこの項の規定の適用を受ける場合には、これらの金額のうちいずれか多い金額)については、贈与税の課税価格に算入しない。一 特定受贈者が贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年三月十五日までに当該住宅取得等資金の全額を住宅用家屋の新築若しくは建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得又はこれらの住宅用家屋の新築若しくは取得とともにするその敷地の用に供されている土地若しくは土地の上に存する権利(以下この項及び次項において「土地等」という。)の取得(当該住宅用家屋の新築に先行してするその敷地の用に供されることとなる土地等の取得を含む。同項第五号イにおいて同じ。)のための対価に充てて当該住宅用家屋の新築(新築に準ずる状態として財務省令で定めるものを含む。以下この号及び第八項から第十二項までにおいて同じ。)をした場合又は当該建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をした場合において、同日までに新築若しくは取得をしたこれらの住宅用家屋を当該特定受贈者の居住の用に供したとき、又は新築若しくは取得をしたこれらの住宅用家屋を同日後遅滞なく当該特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれるとき(これらの住宅用家屋の新築又は取得に係る契約を平成三十三年十二月三十一日までに締結している場合に限る。)。二 特定受贈者が贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年三月十五日までに当該住宅取得等資金の全額を既存住宅用家屋の取得又は当該既存住宅用家屋の取得とともにするその敷地の用に供されている土地等の取得のための対価に充てて当該既存住宅用家屋の取得をした場合において、同日までに当該既存住宅用家屋を当該特定受贈者の居住の用に供したとき、又は当該既存住宅用家屋を同日後遅滞なく当該特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれるとき(当該既存住宅用家屋の取得に係る契約を平成三十三年十二月三十一日までに締結している場合に限る。)。三 特定受贈者が贈与により住宅取得等資金の取得をした日の属する年の翌年三月十五日までに当該住宅取得等資金の全額を当該特定受贈者が居住の用に供している住宅用の家屋について行う増改築等又は当該家屋についての当該増改築等とともにするその敷地の用に供されることとなる土地等の取得の対価に充てて当該住宅用の家屋について当該増改築等(増改築等の完了に準ずる状態として財務省令で定めるものを含む。以下この号、第八項第三号、第十項第三号及び第十二項において同じ。)をした場合において、同日までに増改築等をした当該住宅用の家屋を当該特定受贈者の居住の用に供したとき、又は増改築等をした当該住宅用の家屋を同日後遅滞なく当該特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれるとき(当該住宅用の家屋の増改築等に係る契約を平成三十三年十二月三十一日までに締結している場合に限る。)。
税法は非常に読みにくいですね。
住宅取得等資金の全額を『家屋』又は『土地等』の取得対価に充てる必要があります。
手付金に贈与された資金を充当しても、手付金は対価の一部ですので問題ありません。
<仲介手数料や家具等の購入対価はNG>
仲介手数料や自宅購入後の家具等に贈与された資金を少しでも充当した金額は、非課税の適用が一切受けられないのでしょうか?
住宅取得等資金の定義が別途定められています。家屋や土地の対価に充てるための金銭部分のみが住宅取得等資金となりますので、その全額を取得対価に充てていれば非課税の適用を受けることが可能です。(措置法第七十条の二第2項第五号)
物件金額と同額の住宅ローンを組むようなことをしなければ実務上それほど気にしなくても大丈夫ですが、厳密にいえば家屋と土地等の対価以外に充てた部分は非課税の対象外だとご理解ください。
自宅購入後に『住宅取得資金として』贈与された金銭は、非課税の対象外です。
贈与された金銭を取得対価に充てていなければ話になりませんので、ご注意ください。
1-2.自宅建築に先行する土地購入はタイミングに注意
土地購入後に新築住宅を建築しようとする場合には、贈与と建物取得のタイミングにご注意ください。
贈与を受けた年の翌年3月15日までに、必ず住宅の新築をするようにしてください。
12月に贈与を受けて土地を購入、その後翌年の6月に住宅完成!ではアウトです。贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得することにならないからです。
住宅取得の前年に受ける贈与は要注意です。
2月や3月に建物が完成予定というのは危険ですね。ハウスメーカーの都合によって建物引渡しが3月15日を過ぎてしまう恐れがあるからです。
どうしても年末近くに土地を購入する必要がある場合には、住宅取得資金の贈与は年明けとし建物購入資金に充てることをお勧めします。
災害に基因するやむを得ない事情がある場合には、贈与の翌々年3月15日までに住宅取得でもOKというルールがありますが、贈与の翌年3月15日までの取得が絶対だと考えるようにしてください。
住宅取得資金の贈与を受けるために重要となるタイミングについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
『住宅取得資金の贈与はタイミングが命!【重要タイミング3つに注意】』
<屋根ができていれば最悪OK>
これから住宅取得資金の贈与を受けて自宅を新築する予定の方は、贈与の翌年3月15日までに新居に居住している状態を目指すようにしてください。
贈与の翌年3月15日までに引き渡しが間に合わない場合には、即アウト?
⇒ 屋根ができていれば実はOKです。
租税特別措置法施行規則
(直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税)
第二十三条の五の二 法第七十条の二第一項第一号に規定する新築に準ずる状態として財務省令で定めるものは、屋根(その骨組みを含む。)を有し、土地に定着した建造物として認められる時以後の状態とする。
工事の遅れがないとも限りませんので、2月や3月に新築予定の場合には前年中ではなく引き渡し直前に贈与を受けることをお勧めします。
1-3.土地のみの購入・土地の現物贈与はNG
住宅取得資金の贈与を使って土地のみを取得することは不可能です。
住宅の取得とともにする土地等の取得か、住宅の取得に先行する土地等の取得でないと住宅取得資金贈与の非課税を適用することができないからです。
通常は考えられませんが、土地は住宅取得資金贈与を受けて自分が購入し建物は配偶者が購入するというのはNGです。
土地の現物を贈与受けるような場合も、住宅取得資金贈与の非課税の対象とはなりませんのでご注意ください。
2.相続税対策が目的なら共有名義がお勧め
相続税対策を目的としてこの特例を適用するのであれば、土地建物を共有名義とすることをお勧めします。
一般的に不動産の相続税評価額は購入金額よりも低くなる傾向があるからです。
特に建物については建築費用よりも建物の相続税評価額は大きく下がります。(半分以下となるのが一般的です。)
土地を贈与された金額で購入して建物を親名義で建築するというのは不可能ですのでご注意ください。先にご説明したとおり、住宅取得資金贈与の非課税を受けるためには住宅を購入する必要があるからです。
贈与された子供は家屋の持分を少しでも取得する必要があるわけです。
3.注意点
3-1.贈与税申告が必要
住宅取得資金の贈与を非課税とするためには、贈与税の申告が必要となります。
非課税の範囲内なので何もしませんでは問題ありです。住宅取得資金の贈与を非課税とする要件を欠くことになるからです。
贈与税の申告は、国税庁の確定申告作成コーナーを使うと便利です。
贈与税の申告書をご自分で作成したい方は、以下の記事を参考にしてください。
『【今すぐ簡単にできる!】贈与税の申告書の作成と納付方法を詳細解説』
一般的な金銭贈与についての記事ですのでそのまま作成すると贈与税が多額になってしまいます。必ず『住宅取得等資金の非課税の適用』を受けるを選択して作成するようにしてください。
3-2.他の要件(特に贈与を受ける年の所得)に注意
住宅取得資金の贈与は土地の取得でも適用可能だという説明をいたしましたが、当然に住宅取得等資金の非課税の要件はよく確認するようにしてください。
一定の身内から不動産を購入する場合は非課税の適用を受けることができません。(配偶者や直系血族、生計を一にするその他の親族、事実婚の相手・その親族で生計を一にする者、その他一緒に生活をする者など)
特に注意していただきたいのは、贈与を受ける年の皆さんの所得です。所得によっては、贈与税非課税の適用を受けられませんのでご注意ください。
住宅取得資金の贈与を受けるためには、贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であることが要件となっています。
合計所得金額とは、損失の繰越控除前の所得金額の合計となります。
給与収入のみの場合は、給与総額が2,220万円以下である必要があります。
特定口座で申告をしない株式等の譲渡は所得に含めません。過去の損失を取り戻そうと株式等の所得を確定申告する場合には、合計所得金額を意識するようにしてください。
合計所得金額について詳しくは、国税庁質疑応答をご確認ください。
所得税の住宅ローン控除の所得制限についての解説ですが、同じ『合計所得金額の定義』について解説した内容ですので気にする必要ありません。
その他、住宅取得資金の贈与の要件について詳しく知りたい方は、国税庁ホームページにてご確認ください。
3-3.実家敷地で小規模宅地等の特例が使えなくなる
ご実家で親と同居されていた方や賃貸住宅にお住いの方が住宅取得資金の贈与を使って自宅を購入すると、将来親の相続時に小規模宅地等の特例を受けることができません。
小規模宅地等の特例とは、亡くなった方の自宅敷地の相続税評価額を330㎡部分まで8割減することができるという強力な特例です。
この特例が使えるか使えないかで相続税が課税されるか否かが変わってくることも珍しくありません。
亡くなった方の自宅敷地で小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、以下の方が自宅敷地を相続する必要があります。
- 配偶者
- 相続開始直前に同居していた親族
- 家なき子(相続前3年以内に賃貸暮らし)
贈与税は相続税の補完税と言われています。
これから自宅を購入しようとお考えの方に今すぐ関係ないと思いますが、贈与税非課税の適用を受けるこのタイミングで将来の相続税のことも頭の片隅に入れておいたほうが良いのではないでしょうか。
小規模宅地等の特例について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
『『小規模宅地等の特例』を使って自宅敷地評価を80%減額する方法!』
4.まとめ
住宅取得資金贈与で土地を取得するための条件と注意点をご案内しました。
住宅取得資金贈与で土地を購入することは可能ですが、土地のみの購入はできませんのでご注意ください。
住宅とともにする敷地の取得か住宅の取得に先行して取得する土地の取得対価に充てるのであれば、贈与税非課税の適用を受けることが可能です。
土地を購入後に建物を新築しようとする場合には、贈与と建物取得のタイミングにご注意ください。
贈与の年の翌年3月15日までに自宅を取得する必要があるからです。
住宅取得資金の贈与の適用を受けるためには、贈与税の申告が必要です。贈与を受けた年の所得制限もありますのでご注意ください。